カワラヨモギとは?特徴やヨモギとの違い、育て方、利用上の注意を解説
カワラヨモギとは?特徴やヨモギとの違い、育て方、利用上の注意を解説
河原や海岸の砂地で、糸のように細い葉をつけるヨモギの仲間を見かけることがあります。この植物が「カワラヨモギ」です。
カワラヨモギは、乾燥した砂地に適応したキク科の多年草です。一般的なヨモギとは葉の形や生育場所が異なり、秋には小さな花を多数つけます。生薬「インチンコウ」の基原植物としても知られていますが、野生株を自己判断で薬用や食用にするのは避けなければなりません。
この記事では、カワラヨモギの特徴やヨモギとの見分け方、生育環境、薬用との関係、育て方、庭に生えた場合の駆除方法を解説します。
カワラヨモギとは
カワラヨモギは、キク科ヨモギ属に分類される多年草です。日当たりのよい河原や海岸、原野などの砂地に生育します。
基本情報は次のとおりです。
和名:カワラヨモギ(河原蓬)
学名:Artemisia capillaris
科名:キク科
属名:ヨモギ属
分類:多年草
草丈:約30~150cm
開花時期:主に9~10月
花色:淡い黄緑色、黄褐色
分布:本州、四国、九州、沖縄
生育場所:河原、海岸、砂丘、乾燥した原野など
河川敷では茎が直立して1mを超えることがあります。一方、海岸では強風などの影響を受け、地面をはうような低い姿になることがあります。
カワラヨモギの名前の由来
カワラヨモギという名前は、河原の砂地に生えるヨモギの仲間であることに由来します。
名前を分けると、次のような意味になります。
カワラ:主な生育場所である河原
ヨモギ:キク科ヨモギ属の植物
河原だけでなく海岸の砂地にも生育します。植物名に「カワラ」がついていても、必ず河川敷だけに生えるわけではありません。
カワラヨモギの特徴
季節や茎によって葉の姿が変わる
カワラヨモギは、花をつけない茎と花をつける茎で葉の姿が大きく異なります。
春の葉には次のような特徴があります。
株元からまとまって出る
灰白色に見える
両面に白い絹毛が密生する
葉柄がある
柔らかい印象になる
夏以降に伸びる花茎の葉には、次のような特徴があります。
1~2回羽状に深く切れ込む
裂片が糸のように細い
コスモスの葉に似て見える
毛が少なくなる
茎に互い違いにつく
上部へ行くほど小さくなる
同じ株でも季節によって姿が変わるため、春の葉と夏の葉を別の植物と間違えることがあります。
細長い茎を伸ばす
夏になると、株元から花をつける茎を伸ばします。
茎の特徴は次のとおりです。
細く直立する
上部で細かく枝分かれする
河原では1m以上になることがある
海岸では低く横へ広がることがある
株元がやや木質化する
揉むとヨモギ属特有の香りがある
生育場所によって草姿が大きく変わることも、カワラヨモギの特徴です。
秋に小さな花を多数つける
カワラヨモギは、主に9~10月に開花します。
花の特徴は次のとおりです。
花茎の上部に多数つく
一つひとつの頭花は小さい
花色は淡い黄緑色から黄褐色
目立つ花びらがない
花序全体が円錐状に広がる
風によって花粉が運ばれる
遠くから見ると、細かく枝分かれした茎に小さな粒が多数ついているように見えます。
主根を深く伸ばす
カワラヨモギは、乾燥しやすい砂地へ適応するため、根を深く伸ばします。
地下部の特徴は次のとおりです。
太い主根を地中へ伸ばす
乾燥に比較的強い
成長した株は抜きにくい
移植で根を傷めると生育が遅れる
冬も地下部が残る
植え替える場合は、根をできるだけ傷つけないよう注意が必要です。
カワラヨモギの生育サイクル
カワラヨモギは多年草なので、一つの株が複数年にわたって生育します。
一般的な生育の流れは次のとおりです。
春に株元から新しい葉を出す
初夏に花茎を伸ばす
夏に葉が細かく糸状になる
9~10月ごろに開花する
秋に種子をつくる
晩秋から冬に地上部が枯れる
根や株元が冬を越す
翌春に再び芽を出す
冬に地上部がなくなっても、根が残っていれば翌年も成長します。
カワラヨモギとヨモギの違い
カワラヨモギと一般的なヨモギは同じヨモギ属ですが、葉の形や生育場所が異なります。
カワラヨモギの特徴
河原や海岸の砂地に多い
花茎の葉が糸状に細かく裂ける
春の葉には白い絹毛が密生する
株元がやや木質化する
砂地で根を深く伸ばす
主に9~10月に花をつける
生薬インチンコウの基原植物
ヨモギの特徴
道端、空き地、畑など幅広い場所に生える
葉の裂片がカワラヨモギより幅広い
葉の表は緑色
葉の裏に白い綿毛がある
地下茎によって広がる
草餅などに利用されることがある
生薬ガイヨウの基原植物
葉がコスモスのように細かく裂け、河原や海岸の砂地に生えている場合は、カワラヨモギの可能性があります。
カワラヨモギとオトコヨモギの違い
オトコヨモギも、乾燥した草地などに生育するヨモギ属の多年草です。
オトコヨモギの特徴は次のとおりです。
山野や乾いた草地に生える
葉の裂片はカワラヨモギほど糸状にならない
下部の葉はへら形や卵形になる
茎や葉に毛が少ない
花茎が直立する
全体的に緑色に見える
カワラヨモギは砂地に多く、花茎の葉が糸のように細かく裂ける点が見分ける手がかりになります。
カワラヨモギとハマウツボの関係
カワラヨモギの根には、ハマウツボという寄生植物がつくことがあります。
ハマウツボには次のような特徴があります。
自分で十分な光合成をしない
カワラヨモギなどの根へ寄生する
海岸や河原の砂地に生える
春から初夏に紫褐色の花をつける
地域によっては数が減少している
カワラヨモギの近くに、葉がなく紫褐色の花穂だけを伸ばす植物があれば、ハマウツボかもしれません。
自然の生育地では、カワラヨモギだけでなく、周囲の砂地環境全体を傷つけないようにしましょう。
カワラヨモギは外来種?
カワラヨモギは、日本に自然分布する植物です。本州から沖縄にかけて見られます。
日本以外では、朝鮮半島、中国、ネパールなどにも分布しています。
河原や海岸の砂地という限られた環境に生えるため、河川改修、海岸の開発、護岸化、ほかの植物による被覆などの影響を受けることがあります。地域によっては生育地が少なく、保護の対象になっている場合があります。
カワラヨモギと生薬インチンコウ
カワラヨモギは、生薬「インチンコウ」の基原植物として知られています。日本では、主に乾燥させた頭花が生薬として利用されます。
インチンコウは、漢方薬の原料として用いられています。配合される処方には、茵蔯五苓散や茵蔯蒿湯などがあります。
ただし、次の点に注意が必要です。
野生株を自己判断で薬にしない
煎じ方や使用量を独自に決めない
医薬品と野草を同じように扱わない
体調不良を野草だけで治そうとしない
服薬中の人は医師や薬剤師に相談する
妊娠中や授乳中は自己判断で使用しない
子どもへ独自に与えない
生薬は、基原植物、使用部位、採取時期、加工方法、品質が管理されています。庭や河原のカワラヨモギを乾燥させても、市販の生薬と同じ品質や安全性になるわけではありません。
カワラヨモギエキスとは
カワラヨモギの頭花から抽出されたエキスは、化粧品などに配合されることがあります。
ただし、化粧品に使われる管理された抽出物と、野生株を家庭で煮出した液体は別のものです。
家庭での自作を避けたい理由は次のとおりです。
成分濃度を調整できない
雑菌が繁殖する可能性がある
農薬や汚れが混入するおそれがある
皮膚刺激やアレルギー反応が起こる可能性がある
保存性を確保できない
肌に使用する場合は、用途に合わせて製造された市販品を選びましょう。
カワラヨモギは食べられる?
カワラヨモギは、一般的な食用野草ではありません。ヨモギと同じ仲間ですが、草餅などへ使う通常のヨモギと同じように扱わないでください。
食用をおすすめできない理由は次のとおりです。
食用として一般的に利用されていない
薬用成分を含む
使用部位や採取時期で成分量が変わる
似たヨモギ属植物が多い
野生株は汚染されている可能性がある
地域によっては希少な植物である
キク科植物に反応する人がいる
種類を確実に判別できた場合でも、野生株を採取して食べることは避けましょう。
カワラヨモギの育て方
カワラヨモギは日当たりと水はけのよい場所を好みます。一般的な草花よりも、乾燥気味で肥料分の少ない環境に適しています。
栽培場所
栽培に適した場所は次のとおりです。
一日を通して日が当たる場所
風通しのよい場所
雨水がたまらない場所
乾燥気味に管理できる場所
根を深く伸ばせる場所
日照が不足すると茎が細く伸び、倒れやすくなることがあります。
用土
水はけのよい土を使用します。
鉢植えでは、草花用培養土に軽石や川砂などを混ぜ、水はけをよくします。肥料分の多すぎる土では、茎が伸びすぎて草姿が乱れることがあります。
水やり
地植えでは、根づいた後の水やりは基本的に必要ありません。雨が長期間降らず、葉がしおれる場合に水を与えます。
鉢植えでは、土の表面が乾いてから十分に水を与えます。常に湿った状態にすると根が傷む可能性があるため、受け皿に水をためないようにしましょう。
肥料
多くの肥料は必要ありません。
肥料を与えすぎると、次のような問題が起こることがあります。
茎が必要以上に伸びる
株が倒れやすくなる
葉が茂りすぎる
病害虫が発生しやすくなる
本来の引き締まった姿が失われる
生育が悪い場合に限り、春に少量の緩効性肥料を与えます。
種まきと植え付け
カワラヨモギは種子から育てられます。主根を深く伸ばし、移植による根傷みの影響を受けやすいため、早い段階で定植します。
ポイントは次のとおりです。
種をまく場所を最初に決める
育苗する場合は若いうちに植える
根鉢を崩さない
深植えしない
植え付け後だけは乾燥させすぎない
根づいた後は乾燥気味に管理する
野生株を掘り取って移植するのではなく、適法に流通する種子や苗を利用しましょう。
冬の管理
冬になると地上部が枯れます。枯れた茎は、晩冬から早春に株元で切り取ります。
地下部は生きているため、春になると新しい芽を出します。寒冷地で鉢植えにする場合は、鉢土が完全に凍り続けない場所で管理すると安心です。
庭に生えたカワラヨモギの駆除方法
カワラヨモギは深く根を伸ばす多年草です。不要な株は小さいうちに根から取り除きます。
若い株を掘り取る
若い株であれば、土を湿らせてから掘り取ります。
作業のポイントは次のとおりです。
雨の翌日などに作業する
園芸用手袋を着用する
株元の周囲を広めに掘る
主根を途中で切らないようにする
根をできるだけ残さず回収する
数週間後に再生を確認する
乾いた砂地では土が崩れやすいため、無理に茎を引っ張らず、移植ごてやスコップを使いましょう。
種子ができる前に花茎を切る
株全体を残したいものの、周囲へ増やしたくない場合は、開花前から開花中に花茎を切ります。
すでに種子ができている場合は、周囲へ落とさないよう袋へ入れて回収してください。
繰り返し刈り取る
大きな株を掘り取れない場合は、地際で繰り返し刈り取ります。
新しい葉が伸びるたびに刈り、地下部へ養分を蓄えさせないようにします。一度の刈り取りでは再生するため、長期間継続する必要があります。
除草剤を使用する
広い範囲に発生している場合は、多年生広葉雑草に対応し、使用場所に適合する除草剤を検討します。
使用時の注意点は次のとおりです。
対象雑草と使用場所を確認する
農耕地用と非農耕地用を区別する
ラベルに記載された使用量を守る
周囲の植物へ薬液をかけない
河川や海へ薬液を流さない
強風や雨の日を避ける
子どもやペットを近づけない
自然の河原や海岸では、個人の判断で除草剤を使用してはいけません。公共用地や保全地域の植物は、土地の管理者へ相談してください。
野生のカワラヨモギを採取してもよい?
野生のカワラヨモギは、場所によって採取が禁止または制限されている場合があります。
採取を避けるべき場所には、次のような場所があります。
国立公園や国定公園
自然公園の特別地域
保護対象となっている生育地
河川管理者の許可が必要な場所
私有地
海岸の保全区域
希少なハマウツボが生育する場所
カワラヨモギだけを抜いたつもりでも、根に寄生するハマウツボや砂地に暮らす生き物へ影響を与える可能性があります。
観賞や栽培を目的とする場合は、正規に流通している種子や苗を利用してください。
カワラヨモギに関するよくある質問
カワラヨモギは多年草ですか?
多年草です。冬に地上部が枯れても根や株元が残り、翌春に再び芽を出します。
カワラヨモギはどこに生えますか?
日当たりのよい河原、海岸、砂丘、乾燥した原野などに生えます。水がたまる湿地より、水はけのよい砂地を好みます。
カワラヨモギの花はいつ咲きますか?
主に9~10月です。花は小さく、淡い黄緑色や黄褐色をしています。
カワラヨモギとヨモギは同じですか?
同じキク科ヨモギ属ですが、別の植物です。カワラヨモギの花茎につく葉は、糸のように細かく裂けます。
カワラヨモギは食べられますか?
一般的な食用野草ではありません。通常のヨモギと同じように草餅などへ利用することは避けてください。
カワラヨモギには毒がありますか?
一般に強い毒草として扱われる植物ではありませんが、薬用成分を含みます。自己判断で煎じたり、長期間摂取したりしないでください。
インチンコウとカワラヨモギは同じですか?
インチンコウは生薬名です。日本では、カワラヨモギの乾燥した頭花が基原とされています。植物そのものと、品質管理された生薬は同じものではありません。
カワラヨモギは鉢植えにできますか?
鉢植えでも育てられます。根を深く伸ばすため、深さのある鉢を使用し、水はけのよい土で乾燥気味に管理しましょう。
まとめ
カワラヨモギは、河原や海岸の砂地に生育するキク科ヨモギ属の多年草です。花をつける茎では、葉が糸のように細く裂けます。
主な特徴は次のとおりです。
本州から沖縄に分布する
河原や海岸の砂地に生える
多年草で、根や株元が冬を越す
草丈は生育場所によって約30~150cm
春の葉には灰白色の絹毛が密生する
花茎の葉は糸状に細かく裂ける
9~10月ごろに小さな花をつける
揉むとヨモギ属特有の香りがある
生薬インチンコウの基原植物
一般的な食用ヨモギとは異なる
薬用植物として知られていますが、野生株を自己判断で煎じたり、食べたりすることは避けてください。医薬品として使用される生薬は、部位、採取時期、加工方法、品質が管理されています。
栽培する場合は、日当たりと水はけのよい環境を用意し、肥料や水を与えすぎないようにします。自然の河原や海岸に生える株は、その場所の生態系を構成する植物です。許可なく採取せず、生育地を傷つけないよう観察しましょう。