スミレ(菫)とは?花や葉の特徴、種類の見分け方、育て方を解説
スミレとは?花や葉の特徴、種類の見分け方、育て方を解説
春になると、道端や草地に濃い紫色の花を咲かせるスミレ。日本を代表する身近な野草の一つです。
「スミレ」という言葉はスミレ属全体の総称としても使われますが、植物名としてのスミレは、学名を「Viola mandshurica」という一つの種類を指します。
この記事では、植物としてのスミレを中心に、花や葉の特徴、名前の由来、タチツボスミレなどとの見分け方、花言葉、育て方、増えすぎた場合の管理方法を解説します。
スミレとは
スミレは、スミレ科スミレ属に分類される多年草です。日当たりのよい草地や道端、土手などに生育します。
基本情報は次のとおりです。
和名:スミレ(菫)
学名:Viola mandshurica
科名:スミレ科
属名:スミレ属
分類:多年草
草丈:約7~15cm
開花時期:主に3~5月
花色:濃い紫色
分布:北海道、本州、四国、九州
生育場所:草地、道端、土手、畑の周辺、舗装のすき間など
日本のほか、朝鮮半島、中国、ロシア東部などにも分布しています。
スミレという名前の由来
スミレという名前は、花の形が大工道具の「墨入れ」に似ていることに由来するという説がよく知られています。
墨入れは、木材へ直線を引くために墨を入れて使用する道具です。スミレの花を横から見た姿、特に後方へ伸びる距の形が墨入れに似ているとされます。
ほかにも、「摘み入れ」や旗印の形に由来するなど複数の説があり、正確な語源は確定していません。
スミレの特徴
濃い紫色の花を咲かせる
スミレは春に、鮮やかな紫色の花を咲かせます。
花の主な特徴は次のとおりです。
花の直径は約1.5~2cm
花びらは5枚
上側に2枚の上弁がある
横に2枚の側弁がある
下側に1枚の唇弁がある
花の中心に濃い紫色の筋が入る
側弁の付け根に白い毛がある
花の後方に距が伸びる
5枚の花びらは左右対称に並びます。下側の唇弁には、昆虫を花の中心へ導くような濃い筋が入っています。
花の後ろに距がある
スミレの花を横から見ると、後方へ突き出した袋状の部分があります。この部分が「距」です。
距には蜜がたまり、昆虫が蜜を吸う際に花粉を運びます。
スミレの距には次のような特徴があります。
細長い
紫色を帯びる
花の後方へ突き出す
内部に蜜がたまる
種類を見分ける手がかりになる
スミレ属植物を識別するときは、花の正面だけでなく、横から距の形や色も観察しましょう。
葉は細長く、葉柄に翼がある
スミレの葉は細長く、先端が丸みを帯びた披針形です。
葉の特徴は次のとおりです。
長さは約2~9cm
細長い披針形
先端は丸いか、ややとがる
葉の縁に低い鋸歯がある
葉の基部は深いハート形にならない
葉柄の上部に細い翼がある
花後に大きくなることがある
葉柄の左右にある細い翼は、タチツボスミレやヒメスミレなどと見分ける際の重要なポイントです。
地上茎がない
植物としてのスミレには、葉をつけた地上茎がありません。葉と花柄は、地面近くの株元から直接伸びます。
このようなスミレは「無茎種」と呼ばれます。
一方、タチツボスミレは成長すると地上茎を伸ばし、その茎に葉をつけます。地上茎の有無は、スミレ類を見分ける大きな手がかりです。
太い根を持つ
地下には、黄褐色から黒褐色の太い根があります。
根の特徴は次のとおりです。
地中へ深く伸びる
年数を重ねると太くなる
乾燥に比較的強い
成長した株は抜きにくい
傷めると植え替え後の生育が悪くなる
鉢植えにする場合は、根を伸ばせる深さのある鉢を選びましょう。
スミレの開花時期
スミレの主な開花時期は3~5月です。暖地では早春から咲き始め、寒冷地や標高の高い場所では初夏に開花することがあります。
一般的な生育サイクルは次のとおりです。
早春に葉を伸ばす
3~5月ごろに紫色の花を咲かせる
花の後に果実をつける
晩春から夏に閉鎖花をつくる
種子を周囲へ飛ばす
夏から秋も葉を残すことがある
根が冬を越す
翌春に再び花を咲かせる
多年草なので、環境が合えば同じ株が毎年花を咲かせます。
スミレの閉鎖花とは
スミレは、春の目立つ花が終わった後に「閉鎖花」をつくります。
閉鎖花とは、花びらを開かないまま自家受粉し、種子をつくる花です。
閉鎖花には次のような特徴があります。
花びらを開かない
つぼみのような姿のまま受粉する
昆虫が来なくても種子をつくれる
主に晩春から夏に見られる
春の花が終わった後も結実する
紫色の花がなくなっても、スミレは種子をつくり続けることがあります。庭で増やしたくない場合は、閉鎖花からできる果実にも注意しましょう。
スミレの種が飛ぶ仕組み
スミレの果実は、熟すと三つに裂けます。果皮が乾いて縮む力によって、内部の種子が周囲へ弾き飛ばされます。
種子には、アリが好む付属体がついています。アリが種子を巣へ運ぶことで、株から離れた場所にも広がります。
スミレが思いがけない場所から生えてくるのは、次のような理由によります。
果実が種子を弾き飛ばす
アリが種子を運ぶ
鉢土と一緒に種子が移動する
靴や園芸道具に土が付着する
庭で増やしたくない場合は、果実が上向きになって膨らむ前に摘み取ります。
スミレとタチツボスミレの違い
タチツボスミレは、日本で特によく見られるスミレ属植物です。
スミレの特徴
花は濃い紫色
葉は細長い
葉の基部は深いハート形にならない
葉柄に翼がある
地上茎がない
側弁の付け根に毛がある
日当たりのよい草地や道端に多い
タチツボスミレの特徴
花は淡い紫色
葉は丸みのあるハート形
成長すると地上茎を伸ばす
葉柄の付け根に細かく裂けた托葉がある
側弁の付け根には通常毛がない
林縁や明るい林内にも多い
濃い紫色の花と細長い葉を株元から直接出していれば、植物としてのスミレである可能性が高いでしょう。
スミレとヒメスミレの違い
ヒメスミレは、市街地の道端や舗装のすき間にも生える小型のスミレです。
ヒメスミレの特徴は次のとおりです。
スミレより全体的に小さい
花は濃い紫色
葉は三角形に近い
葉柄に目立つ翼がない
葉の裏が紫色を帯びることがある
舗装や石垣のすき間に多い
スミレはヒメスミレより大きく、葉柄にはっきりした翼があります。
スミレとノジスミレの違い
ノジスミレも、日当たりのよい道端や草地に生える無茎種です。
ノジスミレの特徴は次のとおりです。
花色は淡い紅紫色
花びらが細く見える
花全体がやや平たく開く
葉や花柄に毛が多い
葉柄に翼がほとんどない
芳香のある個体が多い
スミレは花色が濃く、葉柄の翼が目立ちます。花色だけでなく、葉柄や毛の有無も確認しましょう。
スミレとパンジー・ビオラの違い
園芸で栽培されるパンジーやビオラも、スミレ属の植物です。
パンジーや園芸ビオラの特徴は次のとおりです。
花が野生のスミレより大きい
黄、白、青、紫、赤など花色が豊富
複色や模様のある品種が多い
秋から春にかけて長く開花する
園芸用として品種改良されている
花壇や鉢植えに利用される
一般に大輪の園芸品種をパンジー、小輪で花数の多い品種をビオラと呼びますが、両者の境界は明確ではありません。
スミレの花言葉
スミレ全般の花言葉として、次の言葉が知られています。
謙虚
誠実
小さな幸せ
野原の低い場所で控えめに咲く姿から、慎ましさや誠実さを表す花言葉がつけられたと考えられています。
花色ごとに異なる花言葉が紹介されることもありますが、内容は資料によって異なります。
スミレは食べられる?
スミレ属には、花や若葉が食用に利用される種類があります。しかし、野生のスミレを自己判断で採取して食べることはおすすめできません。
注意したい理由は次のとおりです。
スミレ属にはよく似た種類が多い
希少種を誤って採取する可能性がある
農薬や除草剤が付着している場合がある
道路沿いでは汚染の可能性がある
動物の排せつ物などが付着していることがある
園芸品種には食用でない薬剤が使われている場合がある
根や種子を含め、すべての部位を同じように利用できるとは限らない
食用にする場合は、エディブルフラワーとして栽培・販売されているものを選びましょう。
野生のスミレを採取してもよい?
一般的なスミレは広く分布していますが、スミレ属には絶滅が心配される種類もあります。外見だけでは正確に識別できない場合も少なくありません。
採取を避けるべき場所は次のとおりです。
国立公園や国定公園
自然公園の特別地域
保護対象となっている生育地
神社や寺院の境内
公園や公共施設
私有地
希少種が生育する場所
栽培したい場合は、野生株を掘り取らず、適法に流通する苗や種子を利用しましょう。
スミレの育て方
スミレは丈夫な野草ですが、根を傷める植え替えや夏の蒸れを嫌います。
栽培場所
スミレは日当たりのよい場所を好みます。
適した環境は次のとおりです。
春によく日が当たる場所
夏は強い西日を避けられる場所
風通しのよい場所
水はけのよい場所
雨水が長時間たまらない場所
春は十分に日光へ当て、気温が高くなる夏は明るい半日陰へ移すと管理しやすくなります。
用土
水はけと保水性のバランスがよい土を使用します。
鉢植えでは、一般的な山野草用培養土を利用できます。自分で配合する場合は、赤玉土などを中心に、水はけを確保します。
肥料分の多すぎる土では、葉ばかりが茂ったり、根が傷んだりすることがあります。
水やり
鉢植えでは、土の表面が乾いたら鉢底から流れるまで水を与えます。
水やりのポイントは次のとおりです。
常に土を湿らせたままにしない
完全に乾燥させない
夏は朝または夕方に水を与える
花や葉ではなく株元へ水を注ぐ
受け皿に水をためない
地植えでは、根づいた後は降雨だけで育つことが多く、極端な乾燥時だけ水を与えます。
肥料
肥料を多く必要とする植物ではありません。
鉢植えでは、春の生育期と花後に薄い液体肥料を少量与えます。肥料を与えすぎると株が軟弱になり、病害虫や根腐れの原因になります。
植え替え
鉢植えは、根詰まりや用土の劣化が見られたら植え替えます。
植え替えのポイントは次のとおりです。
花が終わった後か秋に行う
太い根を傷つけない
根鉢を必要以上に崩さない
深さのある鉢を使用する
植え替え後は明るい日陰で管理する
根づくまで乾燥させない
種から増やす方法
スミレは種子から増やせます。採取後の新鮮な種子をまくと発芽しやすい傾向があります。
種まきのポイントは次のとおりです。
果実が上向きになったら袋をかぶせる
果実が裂ける前に種子を採る
採取後は乾燥させすぎない
清潔な用土へまく
薄く土をかぶせる
発芽まで用土を乾燥させない
発芽後は風通しを確保する
種子が飛び散りやすいため、果実へ小さな袋をかぶせておくと採取しやすくなります。
スミレの病害虫
スミレには、アブラムシやハダニ、ナメクジなどがつくことがあります。
注意したい害虫
アブラムシ
ハダニ
ナメクジ
ヨトウムシ
スミレ類を食草とするチョウの幼虫
ツマグロヒョウモンなどの幼虫はスミレ科植物の葉を食べます。すべてを害虫として駆除するのではなく、観察目的や被害の程度に応じて対応しましょう。
蒸れと根腐れに注意する
風通しが悪く、土が常に湿っていると株が弱ることがあります。
予防のポイントは次のとおりです。
水はけのよい土を使う
枯れ葉を取り除く
株を密集させすぎない
受け皿に水をためない
夏は風通しのよい半日陰で管理する
庭で増えすぎたスミレの管理方法
スミレは種子を弾き飛ばし、アリにも運ばれるため、庭の思いがけない場所へ増えることがあります。
果実が熟す前に摘み取る
増やしたくない場合は、春の花後だけでなく、夏の閉鎖花も確認します。
管理のポイントは次のとおりです。
花が終わった後の果実を探す
果実が上向きになる前に摘む
夏の閉鎖花も取り除く
熟した果実を強く触らない
摘み取った果実を庭へ放置しない
太い根まで掘り取る
不要な株は、土が湿った日に移植ごてで掘り取ります。
葉だけを引っ張らない
株元の周囲を深めに掘る
太い根を残さない
地中に株元が残っていないか確認する
数週間後に再生を確認する
除草剤を使わなくても、小さな範囲であれば手作業で管理できます。
希少な種類ではないか確認する
庭へ自然に生えたスミレが、必ずしも植物名としてのスミレとは限りません。
葉や花の形が異なる場合は、次の点を記録してから種類を調べましょう。
花の正面
花の横から見た距
葉の形
葉の裏側
葉柄の翼
側弁の毛
地上茎の有無
生育場所
種類がわからない場合は、すぐに抜かず、開花中の姿を確認すると識別しやすくなります。
スミレに関するよくある質問
スミレは多年草ですか?
多年草です。冬に葉が少なくなっても根が残り、翌春に再び花を咲かせます。
スミレの花はいつ咲きますか?
主な開花時期は3~5月です。地域や標高によって時期が前後します。
スミレとタチツボスミレは同じですか?
別の植物です。スミレは細長い葉を株元から出し、タチツボスミレはハート形の葉をつけて地上茎を伸ばします。
スミレは日陰でも育ちますか?
明るい半日陰でも育ちますが、日照が不足すると花が少なくなることがあります。春に十分な日光を確保しましょう。
スミレはなぜ庭の離れた場所に生えるのですか?
果実が種子を弾き飛ばすほか、種子をアリが運ぶためです。鉢土や靴についた土と一緒に移動することもあります。
花が終わったのに種ができるのはなぜですか?
スミレは春の開花後、花を開かない閉鎖花をつくります。閉鎖花は自家受粉し、紫色の花を咲かせなくても種子をつくります。
スミレは食べられますか?
食用に利用されるスミレ属植物もありますが、野生株の採取や自己判断での食用はおすすめできません。食用にする場合は、エディブルフラワーとして販売されているものを選びましょう。
野生のスミレを持ち帰ってもよいですか?
土地の所有者や管理者の許可なく採取してはいけません。スミレ属には希少種もあるため、野生株は生育場所で観察しましょう。
まとめ
スミレは、春に濃い紫色の花を咲かせるスミレ科の多年草です。「スミレ類」の総称ではなく、Viola mandshuricaという植物名としても使われます。
主な特徴は次のとおりです。
草丈は約7~15cm
主に3~5月に開花する
花は濃い紫色
花びらは5枚
花の後方に距がある
側弁の付け根に白い毛がある
葉は細長い
葉柄に翼がある
葉と花柄が株元から直接伸びる
地下に太い根を持つ
閉鎖花でも種子をつくる
種子は果実とアリによって運ばれる
タチツボスミレとの見分けでは、葉の形と地上茎の有無を確認します。細長い葉を株元から出し、濃い紫色の花を咲かせていれば、植物としてのスミレである可能性が高いでしょう。
栽培する場合は、野生株を掘り取らず、適法に流通する苗や種子を利用してください。春は日当たり、夏は風通しのよい半日陰で管理し、太い根を傷めないことが大切です。