ホウレンソウの育て方|種まきの時期や土づくり、代表品種と収穫のコツを解説
ホウレンソウは、おひたしやあえ物、炒め物などに幅広く使える葉物野菜です。畑だけでなくプランターでも育てられ、家庭菜園では、やわらかな間引き菜から大きく育った株まで楽しめます。
栽培を成功させるポイントは、種まきの時期に合った品種を選ぶことと、土の酸度を整えることです。涼しい気候を好むため、初めて育てる場合は、暑さが落ち着く秋の種まきから始めると管理しやすいでしょう。
この記事では、ホウレンソウの特徴や代表品種、種まきから収穫までの育て方を紹介します。
ホウレンソウの基本情報
植物名:ホウレンソウ
漢字名:菠薐草
学名:Spinacia oleracea
英名:Spinach
分類:ヒユ科ホウレンソウ属
原産地:西アジアを中心とする地域
生活形:一年草または越年草
主な利用部分:葉、葉柄
収穫時の草丈:一般に20〜25cm程度が目安
主な種まき時期:春・秋。地域や品種によって異なる
生育適温:おおむね15〜20℃
適した土壌酸度:pH6.5〜7.0程度を目安にする
耐寒性:強い
耐暑性:弱く、夏の栽培には品種や環境の工夫が必要
古い資料ではアカザ科に分類されていることがありますが、現在はヒユ科に含められます。
ホウレンソウの特徴
涼しい時期に育てやすい葉物野菜
ホウレンソウは冷涼な気候を好み、秋から冬にかけて栽培しやすい野菜です。
寒さには比較的強い一方、暑い時期は発芽がそろいにくく、生育にも負担がかかります。夏まきも可能ですが、家庭菜園では秋まきより管理が難しくなります。
酸性の土が苦手
ホウレンソウは、野菜の中でも酸性土壌に弱い作物です。土が強く酸性に傾いていると、芽が出ても葉が黄色くなったり、生長が止まったりすることがあります。
肥料を追加するだけでは改善しない場合があるため、栽培前に土のpHを確認することが大切です。
日が長くなるととう立ちしやすい
ホウレンソウは、日が長くなる条件で花芽をつくりやすい長日植物です。
花をつけるための茎が伸びることを「とう立ち」といい、進行すると葉の収穫に適した時期を過ぎてしまいます。春まきでは、とう立ちの遅い品種を選び、収穫適期を逃さないようにしましょう。
寒さで甘みが増すことがある
冬の寒さに当たったホウレンソウは、糖などを蓄え、甘みが増すことがあります。この性質を利用した栽培が「寒締め」です。
ただし、急激な凍結や強い寒風では葉が傷む場合もあります。十分に育った株を使い、その地域の気候に合わせて管理することが大切です。
ホウレンソウの系統と代表品種
ホウレンソウには、葉の切れ込みが深い東洋系、丸みのある葉が多い西洋系、その両方の特徴を取り入れた交配種があります。
現在はさまざまな交配品種が流通しており、葉の形だけでなく、栽培時期やとう立ちのしにくさ、病気への抵抗性などを見て選びます。
次郎丸
食味のよさで親しまれる、秋冬どり向けの日本種です。葉に切れ込みが入り、昔ながらのホウレンソウらしい姿が特徴です。日が長くなる時期はとう立ちに注意し、基本は秋まきで育てます。
弁天丸
秋冬どりに適した交配品種で、食味のよさが特徴です。葉が立ち上がる草姿のため、株同士の葉が絡みにくく、収穫しやすい利点があります。冬の味わいを楽しみたい家庭菜園にも向いています。
クロノス
濃い緑色の葉と、立性の草姿が特徴の交配品種です。葉先がとがり、切れ込みの入る葉をつけます。耐寒性があり、秋冬の栽培に利用されますが、種まきの適期は地域ごとの表示を確認しましょう。
「ちぢみホウレンソウ」は、ひとつの品種名だけを指す言葉ではありません。寒さで葉が縮んだ姿になるものや、寒締め栽培したものなどに使われる呼び名です。
ホウレンソウの栽培時期
秋まきは初心者にも取り組みやすい
中間地では、9〜10月ごろが秋まきのひとつの目安です。残暑が厳しい場合は、気温が下がるのを待ってまきます。
秋まきでは、夏よりも高温による発芽不良を避けやすく、日が短くなるため、とう立ちの心配も少なくなります。
春まきは品種選びが重要
中間地では、3〜4月ごろを目安に、春まきに適した品種を選びます。
気温の上昇とともに生育が早くなる一方、日が長くなってとう立ちしやすくなります。秋冬向け品種をそのまま使うのではなく、種袋の適期を確認してください。
地域と品種の表示を優先する
寒冷地と暖地では、種まきできる時期が異なります。冬まきや夏まきに対応する品種もありますが、同じ方法ですべての季節に育てられるわけではありません。
種袋の栽培カレンダーを基本に、その年の気温や畑の条件に合わせて調整しましょう。
ホウレンソウの土づくり
畑では土の酸度を確認する
種まき前に土壌酸度を測り、酸性の場合は苦土石灰などで調整します。
pH6.5〜7.0程度を目安にする
石灰の使用量は土の状態と製品表示に合わせる
すでに適正なpHなら、機械的に石灰を追加しない
根が伸びやすいよう、土を十分にほぐす
水がたまりやすい場所では畝を高くする
ホウレンソウは根を深く伸ばすため、表面だけでなく、根が広がる範囲の土を整えることが大切です。
プランターでは野菜用培養土を使う
初めて育てる場合は、酸度調整済みの野菜用培養土が扱いやすいでしょう。新品の培養土に、さらに石灰を加える必要は通常ありません。
容器は、深さ20cm以上をひとつの目安に選びます。鉢底穴から水が抜けることを確認し、受け皿に水をためたままにしないようにします。
種まきと間引きの方法
基本は直まき
ホウレンソウは、育てる場所へ直接種をまく方法が基本です。
土を平らにならし、十分に湿らせます。
深さ1cm程度の浅いまき溝をつけます。
種を1〜2cm程度の間隔でまきます。
土をかぶせ、手で軽く押さえます。
種が流れないよう、やさしく水を与えます。
畑で複数の列にまく場合は、条間を15〜20cm程度確保すると管理しやすくなります。具体的な間隔は品種や収穫サイズに合わせて調整してください。
発芽までは乾燥させない
種まき後に表土が乾燥すると、発芽がそろいにくくなります。発芽するまでは、土の表面の状態をこまめに確認しましょう。
ただし、水浸しにしておくのも適切ではありません。乾燥を防ぎながら、余分な水が抜ける状態を保ちます。
なお、種によっては発芽を助ける加工や薬剤処理がされています。浸水や芽出しを一律に行わず、種袋の説明に従ってください。
混み合う部分を間引く
本葉が出て株が混み合ってきたら、弱い株や密集している部分を間引きます。
最終的な株間は、一般に4〜5cm程度が目安です。大きな株に育てたい場合は、品種に合わせてさらに余裕を取ります。
周囲の株の根を動かしたくないときは、不要な株を地際で切ると作業しやすくなります。
水やりと肥料の管理
畑の水やり
発芽直後から幼苗期は、土を強く乾かさないようにします。
根が伸びてからは降雨を基本にし、晴天が続いて土が乾燥する場合に水を補います。毎日少しずつ与えるよりも、必要なときに根のある範囲まで水を届けることが大切です。
プランターの水やり
土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまで十分に与えます。
冬は生育と乾燥が緩やかになるため、夏と同じ頻度で水を与える必要はありません。寒い時期は、できるだけ午前中の暖かい時間帯に行います。
追肥は生育を見て判断する
栽培期間が比較的短いため、元肥が適切に入っていれば、追肥なしで収穫できることもあります。
生育が遅い場合や葉色が薄い場合は、まず次の点を確認します。
土が酸性に傾いていないか
過湿や乾燥が続いていないか
日当たりが不足していないか
株が混み合いすぎていないか
肥料不足が考えられる場合に、製品表示に従って少量を補います。
収穫の時期と方法
草丈20〜25cm程度が目安
品種にもよりますが、草丈20〜25cm程度に育ったころが収穫の目安です。
種まきから収穫までの期間は、育ちやすい時期で30〜50日程度、低温期には60日以上かかることもあります。日数だけで決めず、株の大きさと状態を確認しましょう。
大きくなった株から収穫する
株元を持って抜き取るか、地際付近を刃物で切って収穫します。周囲に小さな株が残る場合は、土を大きく動かさないように作業します。
一度にすべて収穫せず、大きくなった株から順に収穫すると、残った株にも空間ができます。
種まきをずらして収穫を長く楽しむ
同じ日に大量にまくと、収穫時期も集中します。
適期の範囲内で1〜2週間ずつずらして少量ずつまくと、食べきりやすくなります。ただし、季節が変わる場合は、次にまく品種がその時期に適しているか確認してください。
病害虫と栽培トラブル
べと病
葉に黄色っぽい斑点ができ、葉裏に灰色〜紫灰色のかびが見られることがあります。
密植を避けて風通しを確保し、発病した葉や株は早めに取り除きます。抵抗性品種を選ぶことも対策になりますが、すべてのべと病に発病しないわけではありません。
アブラムシや食葉性害虫
葉裏や株の中心にアブラムシがついたり、ヨトウムシ類などに葉を食べられたりすることがあります。
防虫ネットを使う場合は、種まき直後から設置し、裾に隙間を作らないようにします。収穫までの期間が短い野菜なので、薬剤を使用する際は、適用作物と収穫前の使用可能日数を必ず確認しましょう。
芽が出ない・発芽がそろわない
主な原因には、次のようなものがあります。
種まき時の気温が高すぎる
土が乾燥している
土が過湿になっている
種を深く埋めすぎている
種の保存状態が悪く、発芽力が落ちている
追加の種をまく前に、温度と土の状態を見直します。
葉が黄色くなり、生育が止まる
ホウレンソウでは、酸性土壌による生育不良が重要な確認点です。ただし、黄変だけで原因を断定することはできません。
過湿、肥料不足、根の傷みなどでも似た症状が出るため、土のpHや水はけを確認して対処しましょう。
収穫したホウレンソウの楽しみ方
ホウレンソウは、おひたし、ごまあえ、白あえ、炒め物、スープなどに利用できます。
一般的な品種は、下ゆでして水にさらし、水気を絞って使うと、えぐみを抑えやすくなります。加熱しすぎると食感が失われるため、葉の厚さや使う料理に合わせて調整しましょう。
家庭菜園では、間引き菜のやわらかさや、冬に育った株の味わいの違いを楽しめるのも魅力です。
まとめ
ホウレンソウ栽培のポイントは、涼しい時期を選ぶこと、土の酸度を整えること、種まきの季節に合った品種を使うことです。
特に秋まきは取り組みやすく、畑でもプランターでも育てられます。発芽までの乾燥を防ぎ、適度に間引いて、大きくなった株から収穫しましょう。