【庭用語】カルスとは?剪定の切り口がふさがる仕組みと、挿し木・接ぎ木での役割を解説
カルスとは?剪定の切り口がふさがる仕組みと、挿し木・接ぎ木での役割を解説
庭木を剪定した後、切り口の縁が盛り上がってくることがあります。また、挿し木した枝の切り口に、白っぽいこぶ状の組織ができることもあります。
こうした植物の傷への反応に関わる組織が「カルス」です。剪定や挿し木、接ぎ木の説明でよく使われますが、カルスができれば傷が完全に治ったり、必ず根が出たりするわけではありません。
カルスの基本的な意味と、庭木の管理で知っておきたい役割を解説します。
カルスとは
カルスとは、植物の細胞が分裂・増殖してできる、まだ組織として十分に分化していない細胞の集まりです。
剪定や切断によって傷ついた部分に形成されるほか、植物の一部を人工的な培地で育てる組織培養でも見られます。
園芸では、傷の周囲にできるカルスを「癒傷組織(ゆしょうそしき)」と呼ぶことがあります。
カルスの基本情報
名称:カルス
英語表記:callus
関連する用語:癒傷組織、不定根、傷害材、組織培養
できる場所の例:剪定の切り口の周囲、挿し穂の切断部、接ぎ木の接合部
主な役割:傷への反応や、接ぎ木の組織の接続などに関わる
注意点:カルスの形成だけでは、発根や接ぎ木の成功、傷の内部の健全性までは判断できない
カルスは特定の植物だけにできるものではありません。ただし、できやすさや、その後の発達の仕方は植物によって異なります。
カルスはどのようにできるのか
傷の周囲にある生きた細胞が反応する
枝や茎が傷つくと、その周囲の生きた細胞が反応し、条件が整えば細胞分裂が活発になります。
樹木の切り口では、形成層とその周辺の生きた組織が、傷を覆う新しい組織の形成に関わります。
切断面の中央にある古い木材すべてが、一斉に増殖して傷を埋めるわけではありません。切り口の縁から盛り上がりが見られるのは、このためです。
温度や水分、植物の状態によって発達が変わる
カルス形成には、その植物に適した温度や水分、生育状態が関係します。
寒さで活動が低下しているときや、乾燥・根の傷みなどで弱っているときは、組織の形成が進みにくくなる場合があります。
ただし、温めたり水や肥料を増やしたりすれば、必ずよく発達するというものではありません。過湿や過剰な施肥は、かえって植物を傷めることがあります。
剪定の切り口で見られるカルス
切り口の縁から新しい組織が発達する
枝を切った後、切り口の周囲が輪のように盛り上がり、徐々に内側へ張り出すことがあります。
初期にできるカルスに続き、形成層が整い、木部や樹皮を伴う組織が発達します。この木質化した組織は「傷害材(woundwood)」などと呼ばれます。
園芸では盛り上がった部分をまとめてカルスと呼ぶこともありますが、初期のカルスと、その後に発達する木質化した組織は、厳密には区別されます。
樹木は傷んだ木材を元どおりに戻すわけではない
樹木は、切り取られた枝や傷んだ木材を、そのまま元の状態に戻すわけではありません。
傷の周囲に新しい組織をつくる一方、内部では、傷害や腐朽の影響が健全な部分へ広がりにくくなるように反応します。この仕組みを「区画化」といいます。
切り口を外側から覆うことと、内部で影響の拡大を抑えることは、関連しながらも異なる反応です。
切り口がふさがっても、内部が健全とは限らない
表面が覆われても、内部には傷の跡が残ります。すでに腐朽が進んでいた場合は、外見だけでは分からないこともあります。
そのため、「カルスが巻いたから、木の強度も完全に回復した」とは判断できません。
大きな切り口がある木では、亀裂や枝枯れ、幹の異常なども合わせて確認することが大切です。
カルスの発達を妨げにくい剪定のポイント
枝の付け根の組織を傷つけない
枝の付け根には、幹との境界を示す膨らみや樹皮の盛り上がりがあります。
枝を取り除くときは、この部分を削り込むような切り方を避けます。幹の面に合わせて平らに切る「フラッシュカット」は、幹側の組織まで傷つけ、傷を広げる原因になります。
一方、枝を長く残しすぎると、その残った部分が枯れ、切り口を覆いにくくなることがあります。枝の付け根の形を確認して切る位置を決めましょう。
切り口を不必要に大きくしない
大きな切り口ほど、周囲から覆うまでに時間がかかります。若いうちから枝の配置を整え、将来太枝を切らずに済むようにすることが重要です。
また、切断面を必要以上に斜めにして広げたり、見栄えのために周囲を削り直したりする必要はありません。
樹皮を裂かないように切る
重い枝を一度に切り落とすと、枝の重みで樹皮が裂け、幹まで傷が広がることがあります。
太い枝は先に重さを減らしてから付け根を仕上げるなど、樹皮を守る切り方が必要です。高所や大枝の作業は専門家に依頼しましょう。
でき始めた組織を削らない
切り口の周囲にできた盛り上がりを、見た目を整えるために削ると、新しい傷になります。
苔や汚れを落とそうとして強くこすったり、傷口を繰り返し掘り返したりすることも避けましょう。
挿し木でできるカルスと発根の関係
カルスは根そのものではない
挿し穂の切り口に、白色から淡い黄白色の粒状・こぶ状の組織ができることがあります。
これはカルスである場合がありますが、白い突起がすべてカルスとは限りません。根の原基や、別の組織が見えていることもあります。
また、カルスができていても、そこから必ず根が伸びるとは限りません。
カルスを経ずに根が出る植物もある
挿し木の根は、植物や挿し穂の状態によって、茎の内部の組織から直接形成される場合もあれば、カルスと関連して形成される場合もあります。
したがって、「カルスができてから根が出る」という順番が、すべての植物に当てはまるわけではありません。
カルスの大きさだけで発根の成否を判断せず、実際に根が伸びているかを確認しましょう。
確認のために何度も抜かない
挿し穂を頻繁に抜くと、でき始めた根や組織を傷つけます。
植物に合う時期と用土を選び、乾燥を防ぎながらも、用土が過湿にならないように管理します。芽が動いても、枝の蓄えだけで伸びている場合があるため、新芽だけで発根したとは判断しないようにしましょう。
接ぎ木でのカルスの役割
台木と穂木をつなぐ過程に関わる
接ぎ木では、台木と穂木の接合部にカルスが形成され、両者の間をつなぐ過程が進みます。
その後、形成層や、水分・養分を運ぶ維管束のつながりができることで、接ぎ木した部分が一体として機能するようになります。
このため、接合部を乾燥させず、ずれないように固定することが重要です。
盛り上がりができただけでは成功とは限らない
接合部にカルスができても、十分な維管束の接続が成立しない場合があります。植物同士の相性によって、後から生育不良が現れることもあります。
接ぎ木の成否は、芽吹きだけでなく、その後の継続した成長や接合部の状態を見て判断します。
組織培養で使われるカルス
植物の葉や茎などの一部を、無菌的な条件で培養すると、カルスを形成させられる場合があります。
植物の種類や培地、植物ホルモンなどの条件を調整することで、カルスから芽や根、植物体を再生させる技術が利用されています。
ただし、すべてのカルスが簡単に植物体へ戻るわけではありません。再生しやすさは植物や培養条件によって異なり、培養中に変異が生じることもあります。
カルスと間違えやすいもの
多肉植物の切り口を乾かす処理
多肉植物の挿し木では、切り口を乾かすことを「カルス化させる」と表現する場合があります。
ただし、表面の乾燥や保護層の形成と、細胞が増殖してできるカルスは、厳密には同じ現象ではありません。
多肉植物で行う乾燥処理を、一般的な草花や樹木の挿し木にも一律に適用すると、挿し穂を乾燥させすぎることがあります。
こぶ仕立ての膨らみ
繰り返し剪定した場所にできるこぶは、カルスだけでできているわけではありません。
傷を覆う組織の発達に加え、枝の付け根の肥大や長年の木部の成長などが重なって、こぶ状になります。
虫こぶや病気による腫れ
虫こぶや病原体による腫れも、植物の組織が増えたものですが、通常の傷への反応と同じようには扱えません。
切り口と無関係な場所に膨らみができた場合や、急に大きくなる、枯れ込みを伴う場合は、原因を確認する必要があります。
癒合剤を塗ればカルスができやすくなる?
癒合剤は、製品によって成分や目的が異なります。切り口の保護を目的とするものや、特定の病害予防などに使うものがあります。
ただし、塗れば必ずカルスがよく発達し、傷が早くふさがるとは限りません。一般的な樹木の剪定では、適切な切り方と樹勢の維持が基本になります。
使用する場合は、対象の植物や用途を確認し、製品表示に従いましょう。大きく傷つける切り方を、塗布だけで補えるわけではありません。
まとめ
カルスは、植物の細胞が増殖してできる組織で、傷への反応や挿し木、接ぎ木、組織培養などに関わります。
樹木の剪定では、初期のカルスに続いて木質化した組織が発達し、切り口を周囲から覆っていきます。ただし、表面がふさがっても内部の傷が消えるわけではなく、挿し木でもカルスの形成が発根を保証するわけではありません。
植物の回復を助けるには、カルスを無理につくらせようとするより、適切な切り方と、その植物に合った栽培環境を整えることが大切です。