植物にも性別がある?オス木・メス木の仕組みと庭木選びの注意点
植物のオス木・メス木とは?雌雄異株・雌雄同株の違いと庭木選びの注意点を解説
植物には、人間や動物のように「オス」と「メス」の役割を分けて考えられるものがあります。園芸や庭木の世界では、「オス木」「メス木」と呼ばれることがあり、実がなるかどうか、花粉が出るかどうか、庭に植えたときの管理のしやすさにも関係します。
たとえば、ギンナンがなるイチョウはメス木です。実が落ちると独特のにおいが出るため、街路樹ではオス木が選ばれることがあります。また、キウイフルーツのように、オス木とメス木を近くに植えないと実がなりにくい植物もあります。
この記事では、植物のオス木・メス木とは何か、雌雄異株・雌雄同株の違い、代表的な植物、庭木や果樹を選ぶときの注意点まで詳しく解説します。
植物のオス木・メス木とは?
植物のオス木・メス木とは、花の働きによって分けられる考え方です。
植物の花には、主に花粉を出す「雄しべ」と、実や種子のもとになる「雌しべ」があります。ひとつの花に雄しべと雌しべの両方を持つ植物もあれば、雄花と雌花が分かれている植物もあります。
さらに、雄花をつける株と雌花をつける株が別々になる植物では、花粉を出す株を「オス木」、実をつける株を「メス木」と呼びます。
つまり、園芸でいうオス木・メス木は、植物の性別そのものというよりも、花や実のつき方に基づいた呼び方です。
植物の性表現は意外と複雑
植物の性の仕組みは、単純に「オス木」と「メス木」だけではありません。
動物のように個体ごとに完全にオス・メスが分かれる植物もありますが、ひとつの株の中に雄花と雌花をつける植物や、ひとつの花に雄しべと雌しべを持つ植物もあります。
そのため、植物を理解するには、次のような言葉を知っておくと便利です。
両性花
単性花
雌雄同株
雌雄異株
雄株
雌株
自家受粉
他家受粉
庭木や果樹の実つきを考えるときは、これらの違いを理解しておくことが大切です。
両性花とは?
両性花とは、ひとつの花の中に雄しべと雌しべの両方を持つ花のことです。
多くの草花や果樹は両性花を咲かせます。たとえば、バラ、サクラ、ウメ、モモ、ツバキ、アサガオ、トマト、ナスなどは、基本的にひとつの花の中に雄しべと雌しべがあります。
両性花の植物では、オス木・メス木という区別をしないことが多いです。ひとつの株だけでも花が咲き、条件が合えば実や種ができます。
ただし、両性花であっても、自分の花粉では実がつきにくい植物や、別品種の花粉が必要な果樹もあります。その場合は、受粉樹を植えることがあります。
単性花とは?
単性花とは、雄しべだけを持つ雄花、または雌しべだけを持つ雌花のことです。
雄花は花粉を出す役割を持ち、雌花は受粉後に実や種子をつくる役割を持ちます。
単性花をつける植物には、キュウリ、カボチャ、スイカ、トウモロコシ、クリ、クルミ、マツ、イチョウ、キウイフルーツなどがあります。
単性花の植物では、雄花と雌花が同じ株につく場合と、別々の株につく場合があります。この違いが「雌雄同株」と「雌雄異株」です。
雌雄同株とは?
雌雄同株とは、ひとつの株に雄花と雌花の両方が咲く植物のことです。
雄花と雌花は別々ですが、同じ株の中に両方あるため、基本的には1株でも実がつく可能性があります。
代表的な雌雄同株の植物には、次のようなものがあります。
カボチャ
キュウリ
スイカ
トウモロコシ
クリ
クルミ
マツ
スギ
ヒノキ
たとえば、カボチャやキュウリは、同じ株に雄花と雌花が咲きます。雌花の根元には小さな実のようなふくらみがあり、雄花にはそれがありません。雄花の花粉が雌花に運ばれることで実が大きくなります。
雌雄異株とは?
雌雄異株とは、雄花をつける株と雌花をつける株が別々になる植物のことです。
この場合、雄花をつける株がオス木、雌花をつける株がメス木です。メス木は実をつけますが、オス木は基本的に実をつけません。ただし、オス木は花粉を出し、メス木の受粉を助ける役割があります。
代表的な雌雄異株の植物には、次のようなものがあります。
イチョウ
キウイフルーツ
ヤマモモ
ソテツ
アオキ
ヒイラギ
ナギ
サンショウ
アケビの一部
マタタビ
ホウレンソウ
アスパラガス
アサ
ヤナギ類
ポプラ類
雌雄異株の植物で実を楽しみたい場合は、メス木だけでなく、近くにオス木が必要になることがあります。
オス木とメス木の役割
オス木の役割
オス木は、雄花を咲かせて花粉を出します。
オス木自体は実をつけませんが、メス木が実をつけるためには重要な存在です。キウイフルーツやヤマモモのように、雌雄異株の果樹では、オス木が近くにないと実がなりにくくなります。
庭木では、実が落ちないことをメリットとしてオス木が選ばれることもあります。イチョウの街路樹でオス木が好まれるのは、ギンナンが落ちず、においや清掃の問題が少ないためです。
メス木の役割
メス木は、雌花を咲かせ、受粉すると実や種子をつくります。
果樹や実ものの庭木では、メス木が観賞や収穫の中心になります。ヤマモモ、サンショウ、アオキなどは、実を楽しむ場合にはメス木が必要です。
一方で、実が落ちる、においがある、鳥が集まりやすい、掃除が必要になるといった管理上の注意点もあります。
オス木・メス木がある代表的な植物
イチョウ
イチョウは、オス木とメス木がある代表的な樹木です。
メス木にはギンナンがなります。ギンナンは食用になりますが、落ちた実は強いにおいを出すため、街路樹や住宅地では問題になることがあります。
そのため、街路樹ではギンナンがならないオス木が選ばれることがあります。
庭にイチョウを植える場合は、将来大木になることに加え、メス木だった場合に実のにおいや掃除が発生する点にも注意が必要です。
キウイフルーツ
キウイフルーツは、雌雄異株の果樹です。
果実をつけるのはメス木ですが、実をならせるにはオス木の花粉が必要です。一般的には、メス木数本に対してオス木1本を植えることがあります。
家庭でキウイを育てる場合は、メス品種とオス品種の組み合わせ、開花時期の相性が重要です。メス木だけを植えても、近くに適したオス木がなければ実がつきにくくなります。
近年は、1株で実がなるとされる自家結実性の品種も流通していますが、品種の性質を確認して選ぶことが大切です。
ヤマモモ
ヤマモモも、オス木とメス木がある樹木です。
実を楽しみたい場合はメス木を植える必要があります。ただし、周囲にオス木がないと実つきが悪くなることがあります。
ヤマモモの実は甘酸っぱく、生食やジャム、果実酒に利用されます。一方で、実が落ちると地面を汚しやすいため、駐車場やアプローチ沿いに植える場合は注意が必要です。
サンショウ
サンショウには、実をつける雌株と、花粉を出す雄株があります。
実山椒を収穫したい場合はメス木が必要です。ただし、メス木だけでは実つきが不安定になることがあるため、近くにオス木があると安心です。
一方、葉を薬味として使う「木の芽」を楽しむだけであれば、オス木・メス木にこだわらず育てることができます。
アオキ
アオキは、日陰に強い常緑低木で、雌雄異株の植物です。
メス木は受粉すると赤い実をつけます。冬に赤い実を楽しみたい場合はメス木が必要ですが、近くにオス木がないと実がつかないことがあります。
斑入り品種も多く、日陰の庭や建物の北側の植栽に使いやすい植物です。
ソテツ
ソテツも雌雄異株の植物です。
オス株には雄花、メス株には雌花が出ます。非常に特徴的な花序をつけるため、開花すると見た目にも分かりやすい植物です。
ただし、ソテツは成長が遅く、毎年花が咲くわけではありません。庭木としては、オス木・メス木よりも、スペースや日当たり、冬越しのしやすさを考えて植えることが多いです。
ヒイラギ
ヒイラギも雌雄異株の植物です。
メス木は条件が合うと実をつけます。ヒイラギは防犯性のある生垣や鬼門除けの木としても利用されますが、実を楽しみたい場合はメス木とオス木の関係を考える必要があります。
ナギ
ナギは、神社などにも植えられる常緑樹で、雌雄異株です。
メス木は実をつけます。葉脈が縦に走り、葉が裂けにくいことから、縁結びや信仰に関わる木として扱われることもあります。
庭木として植える場合は、成長後の大きさや実の有無を考えて選びましょう。
オス木・メス木が庭木選びに関係する理由
実を楽しみたいならメス木が必要
果実や赤い実を楽しみたい場合は、基本的にメス木が必要です。
アオキの赤い実、ヤマモモの果実、サンショウの実、キウイフルーツの果実などは、メス木がなければ楽しめません。
ただし、メス木だけでは受粉できない場合があります。雌雄異株の植物では、近くにオス木があるか、受粉に必要な花粉が届く環境かを確認しましょう。
実で汚したくないならオス木が向く場合がある
実を楽しむ必要がない場合は、オス木を選ぶメリットがあります。
たとえば、イチョウのメス木はギンナンが落ちるため、においや掃除が問題になります。街路樹や住宅の近くでは、オス木の方が管理しやすい場合があります。
ヤマモモやアオキなども、実が落ちる場所では清掃が必要になります。駐車場、玄関前、アプローチ沿いでは、実がなる木を植える場所に注意しましょう。
花粉が多い植物ではオス木に注意
オス木は花粉を出すため、植物によっては花粉の量が問題になることがあります。
スギやヒノキのような花粉症の原因になる植物も、雄花から花粉を飛ばします。庭木として一般家庭に植えるケースは限られますが、花粉が多く出る植物では注意が必要です。
ただし、園芸でいうオス木・メス木のすべてが花粉症に直結するわけではありません。植物ごとに花粉の量や飛散方法が異なります。
オス木・メス木の見分け方
花を見て判断する
オス木・メス木を見分ける最も基本的な方法は、花を見ることです。
雄花には花粉を出す雄しべが目立ち、雌花には実になる部分や雌しべが目立ちます。キウイフルーツなどでは、雄花と雌花の構造を見れば区別しやすいです。
ただし、花が小さい植物や高木では、見分けるのが難しい場合があります。
実がなるかどうかで判断する
実がなる木は、基本的にメス木です。
イチョウでギンナンがなる、アオキで赤い実がなる、ヤマモモで果実がなる場合は、メス木と考えられます。
ただし、実がならないからといって必ずオス木とは限りません。若木でまだ実をつけない、近くにオス木がなく受粉していない、剪定で花芽を切っている、環境が合っていないなどの可能性もあります。
苗の段階では見分けにくい
多くの雌雄異株の植物は、苗の段階でオス木・メス木を見分けるのが難しいです。
花が咲く年齢になるまで性別が分からない場合があります。そのため、実を目的に植える場合は、販売時に「雌株」「雄株」「実つき株」などと明記された苗を選ぶと安心です。
キウイフルーツのような果樹では、品種名と性別が分かる苗を購入しましょう。
実がならない原因はオス木・メス木だけではない
実がならない場合、「オス木がないから」と考えがちですが、原因はそれだけではありません。
雌雄異株の植物では、たしかにオス木がないと実がつきにくいことがあります。しかし、次のような原因でも実がならないことがあります。
木が若すぎる
花が咲いていない
開花時期が合っていない
受粉していない
剪定で花芽を切っている
日照不足
肥料の与えすぎ
水切れ
強剪定による樹勢低下
害虫や病気で花が傷んだ
果樹や実ものの庭木では、オス木・メス木の関係だけでなく、花芽、受粉、栽培環境を総合的に見ることが大切です。
受粉樹とは?
受粉樹とは、実をつける木に花粉を供給するために植える木のことです。
雌雄異株の植物では、オス木が受粉樹になります。キウイフルーツでは、メス木の近くにオス木を植えることで受粉しやすくなります。
一方、リンゴ、ナシ、サクランボ、ウメなどの果樹では、花は両性花でも、自分の花粉では実がつきにくい品種があります。その場合は、別品種を受粉樹として植えることがあります。
つまり、受粉樹は必ずしもオス木とは限りません。雌雄異株ではオス木、両性花の果樹では相性のよい別品種が受粉樹になります。
自家受粉と他家受粉の違い
自家受粉
自家受粉とは、同じ花や同じ株の花粉で受粉することです。
トマトやナスなどは、自家受粉しやすい植物です。1株でも実がなりやすいため、家庭菜園でも育てやすい野菜です。
他家受粉
他家受粉とは、別の株や別品種の花粉で受粉することです。
雌雄異株の植物は、基本的に他の株から花粉を受ける必要があります。また、両性花の果樹でも、別品種の花粉がないと実つきが悪いものがあります。
庭や果樹栽培では、植物が自家受粉できるのか、他家受粉が必要なのかを確認しておくことが大切です。
雌雄異株でも1本で実がなることはある?
雌雄異株の植物でも、条件によっては1本で実がなるように見えることがあります。
たとえば、近所や周囲にオス木があり、風や虫によって花粉が運ばれている場合です。自分の庭にはメス木しかなくても、近くにオス木があれば受粉する可能性があります。
また、品種によっては自家結実性があるものや、雌雄の性質が完全に固定されていないものもあります。
ただし、安定して実を楽しみたい場合は、オス木とメス木の関係を確認し、必要に応じて受粉樹を用意した方が確実です。
庭に植えるときの注意点
実を目的にするか、目隠し目的にするかを決める
庭木を選ぶときは、実を楽しみたいのか、目隠しや景観を優先したいのかを決めることが大切です。
実を楽しみたいならメス木が必要ですが、落果や鳥による食害、掃除の手間も発生します。目隠しや低管理を重視するなら、実がつきにくいオス木や、実の少ない品種を選ぶ方が管理しやすい場合があります。
植える場所を考える
実が落ちる植物は、植える場所に注意が必要です。
玄関前、駐車場、アプローチ、ウッドデッキ、隣地境界近くでは、落果が汚れやにおいの原因になることがあります。
イチョウ、ヤマモモ、アオキ、ナギなど、実をつける木は、落果しても困りにくい場所に植えると管理しやすくなります。
受粉に必要な距離を考える
実をならせるには、オス木とメス木の距離も関係します。
風媒花の場合は風で花粉が運ばれ、虫媒花の場合はハチなどの昆虫が花粉を運びます。庭の広さや周囲の植栽環境によって、受粉のしやすさは変わります。
家庭果樹では、できるだけ近くに相性のよい受粉樹を植えると実つきが安定しやすくなります。
剪定時期に注意する
メス木に実をつけたい場合は、花芽を切らないように剪定時期に注意が必要です。
花芽がつく枝を強く切ってしまうと、オス木があっても実はなりません。実ものの庭木では、いつ花芽ができるのか、どの枝に花が咲くのかを確認して剪定しましょう。
オス木・メス木を利用した庭づくり
オス木・メス木の性質を理解すると、庭木選びがしやすくなります。
たとえば、実を楽しみたい場所にはメス木を植え、掃除が大変な場所にはオス木や実の少ない木を選ぶという考え方ができます。
また、赤い実を冬の景色に取り入れたい場合は、アオキやクロガネモチ、ソヨゴなどの実ものを選ぶことがあります。これらも種類や品種によって実つきの性質が異なるため、購入時に確認すると安心です。
果樹では、キウイフルーツやサンショウのように、オス木とメス木の組み合わせが収穫に直結します。実を収穫したい場合は、見た目だけでなく受粉の仕組みまで考えて植えることが大切です。
まとめ|オス木・メス木を知ると庭木と果樹選びが上手くなる
植物のオス木・メス木とは、雄花をつける株と雌花をつける株の違いを表す言葉です。オス木は花粉を出し、メス木は受粉すると実や種子をつくります。
このようにオス木とメス木が別々になる植物を雌雄異株といい、イチョウ、キウイフルーツ、ヤマモモ、サンショウ、アオキ、ソテツなどが代表例です。一方、ひとつの株に雄花と雌花がつく植物は雌雄同株と呼ばれ、カボチャ、キュウリ、トウモロコシ、クリなどが当てはまります。
庭木や果樹を選ぶときは、実を楽しみたいのか、落果を避けたいのか、受粉樹が必要なのかを考えることが大切です。メス木は実を楽しめる一方で、落果や掃除の手間が増えることがあります。オス木は実がならないため管理しやすい場合がありますが、花粉を出す役割があります。
オス木・メス木の違いを知ることで、庭木選び、果樹栽培、生垣づくりの失敗を減らせます。植物の性質を理解し、目的に合った木を選ぶことが、長く楽しめる庭づくりの第一歩です。