ヤマノイモ(山の芋)の育て方|自然薯との違い、植え付けからむかご・芋の収穫まで解説
ヤマノイモの育て方|自然薯との違い、植え付けからむかご・芋の収穫まで解説
ヤマノイモは、独特の香りと強い粘りが魅力のつる性植物です。すりおろしてとろろにしたり、加熱してほくほくした食感を楽しんだりと、さまざまな料理に利用できます。
「ヤマノイモ」という名前は、ナガイモやイチョウイモなどを含む広い意味でも使われますが、植物名としては自然薯と呼ばれる種類を指します。この記事では、主に自然薯としてのヤマノイモについて、家庭菜園での育て方を紹介します。
細長い芋を育てるには植え付け前の準備が重要です。栽培用パイプなどを利用し、収穫しやすい環境を整えてから育て始めましょう。
ヤマノイモの基本情報
植物名:ヤマノイモ
漢字表記:山の芋
別名:ジネンジョ、自然薯
学名:Dioscorea japonica
科名:ヤマノイモ科
属名:ヤマノイモ属
生育型:つる性の多年草
主な利用部位:地下にできる芋、葉の付け根にできるむかご
植え付け時期の目安:3月下旬〜5月
芋の収穫時期の目安:11〜12月
好む環境:日当たりと排水性がよく、極端に乾燥しない場所
栽培時期は、地域の気温や種芋の状態によって変わります。家庭菜園では、春に種芋を植え、秋から冬に新しく育った芋を収穫するのが基本です。
ヤマノイモと自然薯・ナガイモの違い
植物名のヤマノイモは自然薯を指す
植物としてのヤマノイモは、日本の山野にも自生する種類で、一般に自然薯と呼ばれます。細長い芋を作り、すりおろすと強い粘りと風味を楽しめます。
自然薯という名前でも、山で採れたものに限りません。畑で種芋から育てたものも自然薯です。
ナガイモやイチョウイモは別の種類の仲間
食材名の「山芋」は、複数の種類をまとめた呼び方として使われます。
自然薯:植物名のヤマノイモ。細長い芋と独特の香り、強い粘りが特徴
ナガイモ:長い円筒状の芋で、比較的水分が多く、すりおろすとさらりとした食感
イチョウイモ:先端が扇形などに広がり、粘りが強い
ツクネイモ:丸みのある塊状の芋で、きめが細かく、強い粘りがある
イチョウイモとツクネイモは、ナガイモと同じ種に含まれる栽培群です。「大和芋」という呼び名は地域によって指すものが異なるため、種芋を購入するときは種類を確認しましょう。
ヤマノイモの特徴
地下に細長い芋が伸びる
自然薯の芋は、条件がよいと長く伸びます。地中に石や硬い土の層があると曲がったり、枝分かれしたりすることがあり、収穫にも手間がかかります。
そのため、家庭菜園では、自然薯用のパイプや波板を使って芋の伸びる方向を誘導する栽培方法が利用されています。
地上部はつるになって伸びる
春に芽が出ると、つるが周囲のものに絡みながら伸びていきます。支柱やネットを準備しておくと、葉に日が当たりやすく、管理もしやすくなります。
地下の芋を太らせるには、夏から秋にかけて葉を健全に保つことが大切です。
むかごでも増える
葉の付け根には、小さな芋のような「むかご」ができます。むかごは種子ではなく、芽が肥大した栄養繁殖のための器官です。
食用にできるほか、植えて次の栽培につなげることもできます。ただし、小さなむかごから十分な大きさの芋を収穫するには、通常は種芋を育てる期間が必要です。
ヤマノイモの代表的な品種・系統
自然薯には、育成された品種のほか、各地で選び育てられてきた在来系統があります。種芋の流通は地域や生産者によって異なるため、入手先で品種名と栽培方法を確認しましょう。
稲武1号
愛知県で育成された早生の自然薯品種です。中生品種より早い時期の収穫を目指す栽培に利用されます。香りや食味を楽しめる一方、実際の収穫時期は地域の気候で変わるため、種芋の案内に合わせて管理しましょう。
稲武2号(夢とろろ)
愛知県で育成された中生の品種で、「夢とろろ」の名称でも知られています。強い粘りが特徴で、とろろにしたときの濃厚な食感を楽しめます。芋は細長く育つため、パイプなどで伸びる空間を確保することが大切です。
在来系統の自然薯
各地に伝わる自然薯の系統で、一つの品種を指す名称ではありません。芋の形や粘り、生育のそろい方には違いがあります。家庭菜園では、性質や来歴が分かり、健全に管理された栽培用の種芋を選ぶと育てやすくなります。
ヤマノイモの栽培スケジュール
温暖地から中間地では、次の流れが目安になります。
2〜3月:栽培場所と資材の準備
3月下旬〜5月:種芋の植え付け
5〜6月:発芽、支柱やネットへの誘引
6〜8月:生育に合わせた追肥、除草、乾燥対策
9〜10月ごろ:むかごの収穫
11〜12月ごろ:地上部が枯れてから芋を収穫
寒冷地では、土が十分に暖かくなってから植え付けます。芽が出るまで時間がかかることがあるため、植えた場所が分かるように目印を付けておきましょう。
ヤマノイモの育て方
日当たりと排水性のよい場所を選ぶ
葉に十分な光が当たり、水がたまりにくい場所を選びます。山野に自生する植物ですが、畑で芋を充実させるには、地上部をしっかり育てることが大切です。
雨の後に水が長く残る場所では、種芋が腐ったり、根が傷んだりしやすくなります。排水溝や畝を整え、余分な水が抜けるようにしましょう。
芋が伸びる場所と根が育つ場所を整える
通常の土栽培では、芋の伸びる方向に石や硬い土の層がないか確認します。細長い自然薯を地中深く伸ばす方法は、掘り取りまで考えて場所を選ぶ必要があります。
パイプ栽培では、パイプ内と周囲の土を分けて考えます。
パイプ内:芋の形を整えるため、指定された肥料分の少ない清潔な土を使う
パイプ周囲の表層:養分や水分を吸収する根が育つため、土づくりと施肥を行う
パイプ内に元肥入り培養土や未熟な堆肥を詰めるのは避け、使用する資材の説明に従いましょう。
健全な種芋を用意する
初めて育てる場合は、栽培用として販売されている種芋が扱いやすくなります。腐敗や大きな傷がなく、張りのあるものを選びます。
長い芋を切り分けて使う場合は、切り口からの腐敗に注意が必要です。種芋の大きさや芽出し方法は、購入先の栽培説明に合わせます。芽出し済みの種芋は、芽を折らないように扱いましょう。
種芋を植え付ける
普通栽培では、浅い植え溝に種芋を横向きに置いて覆土します。極端な深植えを避け、植え付け後は必要に応じて水を与えます。
パイプ栽培では、種芋から新しく伸びる芋が受け口に入る位置に植え付けることが重要です。種芋そのものをパイプの奥に押し込む方法ではありません。
種芋の置き方、覆土の厚さ、株間は資材の形によって変わるため、専用パイプの説明に合わせてください。
ヤマノイモのパイプ・波板栽培
収穫しやすい方向へ芋を誘導する
専用パイプや波板を斜めに埋め、芋をその内部や表面に沿って伸ばす方法です。深く掘り下げる負担を減らし、芋を傷めずに収穫しやすくなります。
準備の基本は次のとおりです。
資材が収まる長さと深さの溝を掘る。
指定された土をパイプ内や波板上に入れる。
排水を考え、説明書に指定された傾斜で設置する。
芋が伸びる経路に大きな石や異物がないか確認する。
受け口に合わせて種芋を置き、覆土する。
資材を使えば必ずまっすぐな芋になるわけではありません。新しい芋が受け口から外れないよう、植え付け位置を丁寧に合わせましょう。
一般的な浅いプランターは不向き
自然薯は芋が長く伸びるため、浅いプランターでは十分な空間を確保しにくくなります。
容器で育てる場合は、専用資材と組み合わせた大型容器など、芋の伸び方に合った方法を選びます。深い容器でも土が大量に入ると重くなるため、置き場所と収穫時の作業スペースまで考えて準備しましょう。
ヤマノイモの日常管理
つるを支柱やネットに誘引する
発芽前後に丈夫な支柱やネットを設置し、伸び始めたつるを誘導します。生育後に支柱を深く差し込むと、地下の芋や根を傷めるおそれがあります。
つるが絡める支柱やネットを用意する
風で倒れないように固定する
隣の野菜や樹木へ伸びる前に誘導する
誘引ひもをきつく締めない
葉を減らしすぎると芋の肥大に影響するため、伸びたつるをむやみに切り詰めないようにします。
乾燥と過湿の両方を防ぐ
地植えでは降雨を基本とし、晴天が続いて土が乾くときに水を補います。芋が深く伸びても、養分を吸収する根は表層にも広がるため、夏の乾燥対策が重要です。
株元に敷きわらなどを敷くと、土の乾燥や地温の上がりすぎを抑えられます。ただし、水はけが悪い状態を敷き物だけで解決することはできません。
生育に合わせて追肥する
つるや葉が伸びる時期から、芋が肥大する時期にかけて、生育と使用する肥料の説明に合わせて追肥します。
肥料は株元に集中させず、根が広がる周囲の土に施します。パイプの中へ直接入れないようにしましょう。
葉色が濃く、つるが過度に茂っているときは、肥料の追加を控えます。収穫直前まで漫然と与え続けず、栽培暦に合わせて管理します。
雑草は小さいうちに取り除く
生育初期は雑草に覆われないように除草します。根が広がってから深く耕すと傷めやすいため、株元では浅い作業にとどめましょう。
ヤマノイモの病害虫と栽培中のトラブル
種芋が腐る・芽が出ない
低温、過湿、種芋の傷みなどが原因として考えられます。ただし、自然薯は種芋の状態や気温によって発芽が遅れることもあります。
土を何度も掘り返すと芽を傷めるため、排水状態を確認しながら様子を見ましょう。
葉に斑点が出る・つるが弱る
葉に斑点が広がる場合は、病気の可能性があります。風通しを確保し、傷んだ葉や残さを放置しないようにします。
同じ場所での栽培を繰り返すと、土壌病害などのリスクが高まります。数年間隔で栽培場所を替え、健全な種芋を使うことが基本です。
葉が食べられる
葉を食べる幼虫などが付くことがあります。葉の欠けや食べ跡を見つけたら、葉裏と周辺を確認し、早めに取り除きましょう。
農薬を使用する場合は、ヤマノイモへの適用を確認します。むかごも食べる場合は、むかごの収穫を含めて使用できるか、ラベルを確認する必要があります。
ヤマノイモとむかごの収穫方法
むかごは成熟したものから収穫する
秋になり、むかごが育って軽く触れると外れやすくなったころが収穫の目安です。
地面に落ちると見つけにくいため、株の下にシートなどを敷いて受けると集めやすくなります。つるを強く引っ張らず、葉や茎を傷めないように収穫しましょう。
芋は地上部が黄変して枯れてから掘る
つるや葉が自然に黄変し、枯れたころに収穫します。緑の葉が残っている間は芋が充実している途中なので、必要以上に早く掘らないようにしましょう。
普通栽培では、株元から少し離れた位置を掘り、芋の位置を確かめながら周囲の土を取り除きます。つるや芋の上部を持って無理に引き抜くと折れやすくなります。
パイプ栽培では周囲の土を除いて資材を取り出し、芋を支えながら取り出します。表皮を傷めないように丁寧に扱ってください。
ヤマノイモの食べ方と保存方法
とろろや加熱料理で風味を楽しむ
自然薯は粘りが強いため、とろろにする場合は、すりおろした後にだしなどを少しずつ加えると好みの濃さに調整できます。
とろろご飯やとろろそば
すりおろした芋の磯辺揚げ
お好み焼きの生地
輪切りにした芋の焼き物
むかごご飯
むかごの塩ゆでや炒め物
土を十分に落とし、清潔な調理器具を使いましょう。調理中に手がかゆくなりやすい場合は、手袋を使うと作業しやすくなります。
乾燥と凍結を避けて保存する
丸ごとの芋は表面の余分な水分を乾かし、紙などで包んで、凍らない涼しい場所に置きます。暖かい室内しかない場合は、乾燥を防いで冷蔵庫の野菜室などで保存します。
切った芋は切り口を覆って冷蔵し、早めに使い切りましょう。すりおろして小分けにし、冷凍する方法もあります。
種芋用に残す場合は、食用と分けて管理し、腐敗や極端な乾燥がないか定期的に確認します。
まとめ
ヤマノイモは、自然薯ならではの強い粘りと香りを楽しめる作物です。細長い芋を育てるため、植え付け前に栽培場所と収穫方法を決めておくことが成功につながります。
自然薯とナガイモなどの違いを確認して種芋を選ぶ
日当たりと排水性のよい場所に植える
パイプや波板を使う場合は設置と植え付け位置を丁寧に合わせる
支柱やネットでつるを誘導し、葉を健全に保つ
夏は敷きわらなどで乾燥を防ぐ
秋にむかご、地上部が枯れてから芋を収穫する
春から秋までじっくり育てる分、芋を掘り上げるときの楽しみも大きくなります。自分の畑に合った栽培方法を選び、むかごと自然薯の両方を味わってみてください。