イチゴの育て方|品種の選び方から植え付け、受粉、収穫まで解説
イチゴは、白い花と甘酸っぱい実を楽しめる多年草です。庭の畑だけでなく、鉢やプランターでも栽培でき、完熟した実を自分で収穫できることが家庭菜園の魅力です。
栽培では、株元の「クラウン」を埋めないこと、日当たりを確保すること、開花期に受粉を助けることが大切です。また、春に収穫する一季なりと、条件が合えば繰り返し実る四季なりでは管理が異なります。
この記事では、家庭で育てるイチゴの特徴や代表品種、植え付けから収穫までのポイントを紹介します。
イチゴの基本情報
植物名:イチゴ
漢字名:苺
学名:Fragaria × ananassa
別名:オランダイチゴ
科名:バラ科
属名:オランダイチゴ属
分類:多年草
由来:南北アメリカ原産の野生種をもとに、ヨーロッパで成立した栽培イチゴ
草丈:15〜30cm程度
開花期:一季なりの露地栽培では主に春
収穫期:一季なりの露地栽培では主に4〜6月
花色:白が一般的。観賞性を重視した品種には桃色や赤色もある
日照条件:日なた
土壌条件:水はけと水持ちがよい土
主な用途:生食、菓子、ジャム、家庭菜園
開花・収穫時期は、地域や品種、植え付け時期、栽培方法によって変わります。この記事では、屋外で育てる家庭菜園を中心に解説します。
イチゴの特徴
赤い部分は花托が膨らんだもの
普段食べている赤い部分は、花の土台に当たる「花托」が発達したものです。表面に並ぶ小さな粒が植物学的な果実で、その中に種子が入っています。
一つの花には多数の雌しべがあり、それぞれの受粉・受精の状態が実の形に関わります。受粉が不十分な部分があると、形がいびつになることがあります。
ランナーの先に子株ができる
株から伸びる細長い茎を「ランナー」と呼びます。その節に子株ができ、土に触れると根を下ろします。
イチゴは多年草ですが、同じ親株を長年育て続けると、株が混み合ったり病害虫が蓄積したりすることがあります。健康な子株への更新や、新しい苗への植え替えも管理の選択肢です。
果樹ではなく、果実的野菜として扱われる
食卓では果物として親しまれていますが、農業上は草本性の作物として「果実的野菜」に分類されます。
樹木になる果物とは異なり、低い位置に実を付けるため、泥はねやナメクジなどへの対策も大切です。
一季なりと四季なりの違い
一季なりイチゴ
家庭の露地栽培では、主に春から初夏にまとまって収穫するタイプです。多くの品種は、秋の気温低下や日長の変化を受けて花芽を作ります。
秋に植え付けて冬を越し、翌春に収穫する栽培が基本です。スーパーで冬から販売される一季なりイチゴは、施設や温度管理などを利用して収穫時期を調整しています。
四季なりイチゴ
一季なりとは花芽を作る条件が異なり、適した温度や日長のもとで、繰り返し開花・結実するタイプです。
ただし、四季なりという名前でも、一年中休みなく収穫できるわけではありません。 真夏の高温や冬の低温で、生育や開花が鈍ることがあります。品種と地域に合った管理が必要です。
代表的なイチゴの品種
宝交早生(ほうこうわせ)
家庭菜園の露地栽培で親しまれてきた一季なり品種です。比較的育てやすく、初めてのイチゴ栽培でも候補になります。果実は柔らかく、採れたてをその場で味わえる家庭栽培に向いています。
女峰(にょほう)
甘みと酸味の調和がよい一季なり品種です。生食はもちろん、菓子やジャムにも使いやすい味わいがあります。実を多く付けた場合は、株の大きさに合わせて小さな花や傷んだ実を整理します。
章姫(あきひめ)
細長い円錐形の果実が特徴の一季なり品種です。酸味が穏やかで甘さを感じやすく、果肉は柔らかめです。実が傷まないように土との接触を防ぎ、熟したものを丁寧に収穫すると楽しめます。
とちおとめ
甘みと酸味のバランスがよく、果肉が比較的しっかりした一季なり品種です。家庭向けの苗も流通しています。実付きと品質を安定させるには、日当たり、水分、受粉の状態を整えることが大切です。
よつぼし
種子繁殖性を持つ四季なりタイプの品種です。甘み・酸味・風味のよさが特徴で、家庭では苗から育てることもできます。長く収穫を楽しめますが、高温期は株を消耗させない管理が必要です。
「よつぼし」が種子繁殖型であることは、収穫した実から採った種で同じ性質を再現できるという意味ではありません。品種を確実に楽しみたい場合は、品種名が明示された正規の種苗を選びましょう。
イチゴの育て方
日当たり・置き場所
日光がよく当たり、風通しのよい場所で育てます。日照不足では株が充実しにくく、花付きや実の品質にも影響します。
鉢植えでは、屋外の明るい場所を基本にします。真夏は鉢の過熱や水切れに注意し、必要に応じて強い西日を避けてください。
用土と鉢
水はけと適度な保水性を兼ね備えた土が適しています。鉢植えなら、市販のイチゴ用や野菜用培養土を利用すると手軽です。
一株なら直径24〜30cm程度の鉢が目安です。プランターでは株間を25〜30cm程度確保し、葉が極端に重ならないようにします。
地植えで水がたまりやすい場合は、高畝にして排水を改善しましょう。
苗の選び方
次のような苗を選ぶと、その後の管理がしやすくなります。
株元がしっかりしている
中心から新しい葉が出ている
葉に目立つ病斑や害虫がない
極端に徒長していない
品種名と栽培方法が確認できる
大きな葉が多いことだけでなく、株元と新芽の状態を見ることが大切です。
植え付け時期
一季なりの秋植えは、温暖地・中間地では10〜11月ごろが目安です。寒冷地では冬までに根付けるよう、地域の適期に合わせます。
春に販売される開花・結実用の苗から始めることもできます。四季なり品種は春や秋の植え付けが扱いやすいものの、苗の説明に従ってください。
クラウンを埋めない
クラウンは、葉や花茎が出る株元の短く太い部分です。ここを深く埋めると、生育不良や腐敗の原因になります。
根は土で覆い、クラウンの中心を土に埋めない深さに植えます。逆に浅すぎて根が露出する状態も避けてください。
ランナーの切り跡が分かる苗では、その反対側に花房が出やすい傾向があります。実を鉢や畝の外側へ出したいときの目安になりますが、必ず同じ向きになるわけではありません。
水やり
鉢植えでは土の表面が乾いたら、鉢底から流れるまで水を与えます。花や実へ繰り返し水をかけず、株元の土へ注ぎましょう。
開花・結実期の強い水切れは、実の肥大に影響します。一方、常に土が湿り続ける状態も根傷みの原因になります。
冬は水の消費が減りますが、鉢土を完全に乾かさないようにします。
肥料
植え付け時に適量の元肥を施し、その後は品種や栽培時期に合わせて追肥します。
秋植えの一季なりでは、春に生育が再開する時期などが追肥の目安になります。肥料入り培養土を使った場合は、その肥効期間も確認してください。
窒素が多すぎると葉ばかり茂り、株が混み合うことがあります。大きな実を求めて、一度に大量の肥料を与えないようにしましょう。
花を実らせるための受粉管理
多くの品種は一株でも実る
一般的な栽培イチゴの多くは、自分の花粉で実を付けられます。異なる品種を必ず一緒に植える必要はありません。
ただし、花粉が雌しべへ十分に届くことは必要です。昆虫が少ないベランダや雨の多い時期には、人工受粉が役立ちます。
柔らかい筆で花の中心をなでる
花が開き、花粉が乾いている晴れた日の午前中などに、柔らかい筆で花の中心を優しくなでます。周囲の雄しべの花粉を、中央に集まる雌しべへ行き渡らせるイメージです。
一度だけで終えず、開花中に日を変えて繰り返すと、受粉むらを減らしやすくなります。強くこすって花を傷めないようにしてください。
実の変形は受粉以外でも起こる
いびつな実は、受粉不足だけでなく、開花時の低温や高温、花の傷み、害虫などでも生じます。
人工受粉をしても改善しない場合は、温度や株の状態も合わせて確認しましょう。
ランナーと葉の管理
収穫期のランナーは早めに切る
実を育てたい時期にランナーを伸ばし続けると、子株の生育にも養分が使われます。苗を増やす予定がなければ、清潔なハサミで切り取ります。
無理に引っ張ると親株を傷めるため、株元を確認して作業してください。
古葉や傷んだ実を取り除く
黄色くなった古葉、病気の葉、腐った実を放置すると、風通しが悪くなったり、病気が広がったりする原因になります。
ただし、元気な葉まで一度に多く取り除くと、実を育てる力が落ちます。傷んだ部分を中心に整理しましょう。
子株を育てる場合は収穫後に行う
増殖できる品種で苗を更新する場合は、健康な親株から出た子株を土へ固定し、発根させます。十分に根付いてから親株とのランナーを切り離します。
品種によって増殖に関する条件があるため、苗のラベルや育成者の案内も確認してください。病気が疑われる株からは、子株を採らないようにします。
収穫と実を守る工夫
株に付いたまま十分に熟させる
赤い品種では、実全体が品種本来の色になり、ヘタの近くまで色付いた頃が収穫の目安です。白い品種は、色以外の目安を苗の説明で確認します。
イチゴは収穫後に甘さが大きく増す果物ではありません。株上で熟したものを採ることが、家庭栽培ならではのおいしさにつながります。
実を引っ張らずに収穫する
果実を強く握ったり引いたりせず、ヘタの上の果柄をハサミなどで切ります。
採れた実は傷みやすいため、早めに利用しましょう。洗う場合は食べる直前に、ヘタを付けたまま優しく洗います。
泥はねと食害を防ぐ
実が直接土に触れないよう、敷きわらやマルチ、果実を支える資材などを利用します。
鳥が来る場所では防鳥ネット、ナメクジが多い場所では鉢周りの整理などを行います。ネットは受粉や日常の管理を妨げないように設置してください。
よくあるトラブルと対処法
花が咲かない
苗が小さい、日照が不足している、肥料が多すぎる、花芽形成に適した条件を満たしていない、といった原因が考えられます。
まず一季なりか四季なりかを確認し、その品種の生育周期に合う管理をしているかを見直しましょう。
実が小さい、甘くない
株の大きさに対して実が多い、日照不足、水切れ、収穫が早いなどの原因があります。
弱い株では小さな花や傷んだ実を整理し、無理に多く実らせないことも大切です。甘くしようとして極端に水を切ると、株も実も傷むため避けてください。
灰色のかびや白い粉が出る
果実などに灰色のかびが出る灰色かび病、葉や果実に白い粉状の症状が出るうどんこ病などが発生することがあります。
傷んだ部分を取り除き、風通しを改善します。薬剤を使う場合は、イチゴと対象病害虫への適用、収穫前日数、使用回数を守ってください。
ハダニやアブラムシが付く
葉裏や新芽を定期的に確認し、早期に対処します。収穫する作物なので、薬剤を使う場合は観賞植物と同じ感覚で扱わず、表示を確認しましょう。
まとめ
イチゴは、鉢やプランターでも収穫を楽しめる多年草です。品種の性質を確認し、クラウンを埋めず、日当たりと適切な水分を確保して育てます。
開花期には必要に応じて受粉を助け、収穫期の不要なランナーを取り除くことも大切です。株に負担をかけすぎず、十分に熟した実を丁寧に収穫して、家庭栽培ならではの味わいを楽しみましょう。