ビカクシダ・コロナリウムの育て方|特徴や水やり、板付け・増やし方・冬越しを解説
ビカクシダ・コロナリウムの育て方|特徴や水やり、板付け・増やし方・冬越しを解説
画像:AI作成
ビカクシダ・コロナリウムは、王冠のように立ち上がる貯水葉と、長く垂れ下がる胞子葉が魅力のシダ植物です。成長すると迫力のある姿になり、吊り下げて観賞する楽しみがあります。
育てるポイントは、暖かさと明るさを確保し、水苔の内部に水分が停滞しないように管理することです。熱帯性の種類なので、日本では冬の保温が重要になります。
この記事では、コロナリウムの特徴から水やり、板付け、増やし方、季節ごとの管理まで紹介します。
ビカクシダ・コロナリウムの基本情報
植物名:ビカクシダ・コロナリウム
漢字表記:麋角羊歯(ビカクシダの表記)
学名:Platycerium coronarium
科名:ウラボシ科
属名:ビカクシダ属
分類:常緑性の着生シダ
主な分布:東南アジア
生育場所:熱帯の森林の樹上など
観賞する部分:立ち上がる貯水葉と、長く下垂する胞子葉
開花:花は咲かない
主な用途:板付け、吊り鉢、バスケット仕立て
「コウモリラン」と呼ばれることもありますが、ランの仲間ではありません。また、コロナリウム自体はビカクシダ属の一種であり、単なる園芸品種名ではありません。
ビカクシダ・コロナリウムの特徴
王冠のように立ち上がる貯水葉
株元を包む貯水葉は、成長すると上部が分かれて立ち上がり、王冠やかごのような姿になります。
自然界では、落ち葉などを受け止め、根の周囲の環境を保つ役割を果たします。栽培でも根を覆う大切な部分なので、見た目を整えるために剥がさないようにしましょう。
長く垂れ下がる胞子葉
胞子葉は細長く伸び、分岐しながら下へ垂れます。大きく育つ種類なので、葉が伸びる下方向の空間を確保することが大切です。
成熟した株では、胞子をつくる部分が、垂れ下がる葉の一部に広がった形で現れます。幼株では成株らしい姿が十分に出ないため、時間をかけて変化を楽しみましょう。
貯水葉は茶色くなって残る
若い貯水葉は緑色ですが、成熟すると茶色く乾いた状態になります。これは通常の変化です。
乾いた貯水葉は根を覆う構造の一部として残ります。茶色いという理由だけで切ったり、無理に剥がしたりする必要はありません。
樹木に着生する
樹木を足場にして育つ植物で、寄生植物ではありません。栽培では、板やバスケットなどに固定し、根の周囲に保水性と通気性のある基材を用意します。
大株になると、吸水後の重量も増します。板や吊り金具は、将来の大きさを考えて選びましょう。
ビカクシダ・コロナリウムの品種・流通タイプ
コロナリウムの基本種
立ち上がる貯水葉と、長く枝分かれしながら下垂する胞子葉が特徴です。大株では広い栽培空間が必要になります。胞子から育てた株には個体差があり、葉の幅や分岐、垂れ方などの変化を楽しめます。
フィリピネス・ドワーフとして流通するタイプ
比較的小型の姿を楽しむタイプとして流通します。胞子葉の曲がり方やまとまりのある株姿が魅力です。ただし、名称だけで最終的な大きさが保証されるわけではないため、親株の姿や増殖方法も確認するとよいでしょう。
産地名や「ドワーフ」などの表記は、必ずしも統一された品種名とは限りません。購入時は、販売株の由来や成株の写真を参考にします。
ビカクシダ・コロナリウムの年間管理
春:気温の上昇と新芽の動きに合わせ、水やりを調整する
初夏:板付けや基材の更新を行いやすい時期
夏:水分を確保しながら、強い日差しと過度な高温を避ける
秋:夜間の冷え込みに注意し、早めに室内管理へ切り替える
冬:保温と明るさを確保し、乾き方に合わせて水やりを減らす
温度を保てる室内では、冬にも生育することがあります。季節だけで断水や施肥の判断をせず、株の動きを確認しましょう。
ビカクシダ・コロナリウムの育て方
置き場所と日当たり
明るい日陰や、柔らかい光が届く場所で管理します。室内では、レースのカーテン越しの窓辺や、適切な植物育成用照明の下が候補です。
暗すぎると、葉が細長くなったり、生育が鈍くなったりすることがあります。一方、強い直射日光に急に当てると葉焼けするため、光を増やす場合は少しずつ慣らします。
温度管理
熱帯性のため、冬は暖かく保つことを優先します。家庭では最低温度が15℃程度以上になる場所を目安にすると、生育を維持しやすくなります。
これは余裕を持って管理するための目安であり、耐えられる限界温度ではありません。小苗や入手直後の株は、とくに急な冷え込みを避けてください。
水やり
水苔の表面だけでなく、内部の湿り具合と、持ったときの重さを確認します。基材が軽くなり、乾きが進んだら内部まで十分に吸水させます。
表面だけ濡らして済ませない
常に内部が水浸しになる状態を避ける
長期間乾かし切ることを繰り返さない
水やり後は余分な水をしっかり切る
水苔が厚いほど、表面と内部の乾き方に差が出ます。「毎日」「週一回」などと固定せず、基材の量や温度に合わせましょう。
冬の水やり
生育が鈍く、基材も乾きにくくなったら、水やりの間隔を延ばします。
冷たい水で株を長時間冷やさず、室温に近い水を使うと管理しやすくなります。葉水だけで根への水分補給を済ませないようにしてください。
湿度と風通し
乾いた空気を避けながら、穏やかな空気の動きを確保します。冷暖房の風や強い送風を直接当てると、葉や水苔が急に乾きます。
加湿する場合も、高温の密閉空間に置くことは避けましょう。貯水葉の内側や株元が長くぬれたままにならないよう、温度と通気を合わせて調整します。
肥料
新しい葉や根が生長している時期に、薄めた液体肥料や少量の緩効性肥料を使います。量や希釈倍率は製品の表示に従ってください。
生長点へ肥料を直接載せたり、弱った株に多量の肥料を与えたりすることは避けます。低温で生育が鈍っているときは施肥を控えましょう。
ビカクシダ・コロナリウムの板付け方法
成長後の大きさを考えて準備する
丈夫な板やコルク、固定用の糸、清潔な水苔などを用意します。下垂する胞子葉を傷めない作業場所も確保してください。
幼株を最初から大量の水苔に植えると、内部が乾きにくくなる場合があります。根の量と管理環境に合った基材量から始めましょう。
板付けの手順
水苔を吸水させ、余分な水を軽く切る
株の生長点と、葉が出る方向を確認する
根鉢を大きく崩さずに取り出す
板に水苔を置き、株を配置する
根の周囲を水苔で支え、ぐらつかないよう固定する
生長点や新葉を糸で締め付けていないか確認する
明るい日陰で養生する
コロナリウムは成長に伴って株の向きや姿が変化します。葉を無理に曲げて一般的なビカクシダの形へ合わせず、株の構造に沿って固定しましょう。
ビカクシダ・コロナリウムの植え替え
水苔が劣化して水の抜けが悪くなった、板が傷んだ、株が不安定になった場合などに、基材や支持材の更新を検討します。
貯水葉が根鉢を覆っているときは、無理に剥がしてすべてを交換する必要はありません。健康な根と葉を残し、取り扱える範囲で作業してください。
生長点付近が柔らかい、新芽が傷んでいるなどの不調があるときは、単なる鉢増しではなく、過湿や低温などの原因を確認します。
ビカクシダ・コロナリウムの増やし方
子株を分ける
子株が生じ、独立した生長点と十分な根が確認できる場合に株分けを検討します。
小さな芽を急いで切り取ると、親株も子株も傷むことがあります。分離する位置が分からない場合は、無理に分けずに育てましょう。
胞子から育てる
成熟した胞子をまいて増やす方法もあります。ただし、前葉体から小さな株になるまでの管理が必要で、観賞できる大きさまで時間がかかります。
胞子から育った株は、親株と同じ姿になるとは限りません。特定の株の特徴を維持したい場合は、増殖方法を確認してください。
葉挿しでは簡単に増えない
家庭で胞子葉を切って水や土に挿しても、一般的な挿し木のように増やせるわけではありません。
増殖用に健康な葉をむやみに切り取らず、子株や胞子を利用する方法を考えましょう。
ビカクシダ・コロナリウムの手入れ
茶色い貯水葉を残す
乾いて硬くなった貯水葉は、通常の成熟によるものです。根を保護する役割があるため、見た目だけを理由に剥がさないでください。
ただし、柔らかく崩れる、異臭がする、急に黒く広がる場合は、腐敗の可能性も確認します。
胞子葉を無理に短くしない
垂れ下がる葉の長さは、コロナリウムの魅力の一つです。置き場所に収まらないからといって、健康な葉先を繰り返し切ることは避けます。
十分な空間を確保できる場所へ移すか、購入時に成株の大きさを確認しましょう。
葉裏と株元を観察する
カイガラムシなどが、見えにくい葉裏や株元につくことがあります。水やりや移動の際に観察し、早めに対処します。
葉を覆う細かな毛や、胞子をつける茶色い部分まで、汚れとしてこすり落とさないようにしてください。
ビカクシダ・コロナリウムの夏越し・冬越し
夏越しのポイント
暖かい時期はよく生育しますが、日本の強い西日や閉め切った室内の高温には注意します。
強い直射日光を遮る
水苔の内部まで乾き方を確認する
風を直接当て続けない
吸水後の重さに耐えられる固定状態を保つ
大きな胞子葉を強風で傷めない
冬越しのポイント
夜間の気温が下がり始めたら、早めに室内へ移します。窓際は夜に冷えることがあるため、必要に応じて窓から離してください。
保温だけでなく、明るさも確保します。冬に生育が鈍くなっても、夏と同じ頻度で水や肥料を与え続けないようにしましょう。
ビカクシダ・コロナリウムによくあるトラブル
貯水葉が茶色くなる
成熟に伴って乾いた茶色になるのは、通常の変化です。
一方、新しい貯水葉が急に黒ずむ、柔らかく崩れる場合は、水分の停滞や低温などを確認します。色だけでなく、変化の速さと組織の状態を見て判断しましょう。
胞子葉がしおれる
水苔が乾いている場合は、水不足が考えられます。十分に吸水させ、排水してください。
内部が湿っているのにしおれる場合は、根の不調や低温なども疑います。水を追加し続けるだけでは改善しないことがあります。
葉が細長く、弱々しくなる
光不足が影響している可能性があります。ただし、幼株から成株への変化や個体差もあるため、一枚の葉だけで判断しないようにします。
新しく出る葉を観察しながら、明るさを少しずつ調整してください。
葉先が茶色くなる
長期間の乾燥、強い日差し、接触による傷み、根の不調などが考えられます。
葉が壁や床に触れていないかも確認しましょう。傷んだ部分は元に戻らないため、次の葉を健康に育てる環境を整えます。
まとめ
ビカクシダ・コロナリウムは、王冠状の貯水葉と長く垂れる胞子葉を楽しめる大型の着生シダです。暖かさと明るさを保ち、根の周囲の乾湿を見ながら育てましょう。
学名はPlatycerium coronarium
ビカクシダの漢字表記は麋角羊歯
成長後の葉の長さを考えて置き場所を選ぶ
水やりは水苔の内部の湿り具合と重さで判断する
茶色く乾いた貯水葉は無理に剥がさない
板付けでは生長点を埋めず、締め付けない
冬は保温と明るさを確保し、水やりを調整する