スズメバチは一年間どのように活動する?春の巣作りから秋の繁殖・冬越しまで解説
春に庭を飛ぶ大きなスズメバチと、夏から秋に集団で活動するスズメバチでは、役割や行動が異なります。
日本で一般的に見られるスズメバチの多くは、春に女王バチが一匹で巣を作り始め、夏に働きバチを増やし、秋に次世代の女王バチを育てます。そして、冬を越すのは基本的に交尾を終えた新女王バチです。
この一年の流れを知ると、庭の点検や剪定で注意したい時期が分かります。ここでは、スズメバチの特性と季節ごとの活動、庭仕事での注意点を解説します。
スズメバチの基本的な特性
女王バチ・働きバチ・雄バチで役割が異なる
スズメバチは、巣を中心とした集団で生活します。
女王バチ: 巣を作り始め、働きバチが増えた後は主に産卵を担います。
働きバチ: 雌の個体で、餌集め、幼虫の世話、巣作り、巣の防衛などを行います。
雄バチ: 主に繁殖期に現れ、新女王バチとの交尾を担います。
新女王バチ: 次の年に新しい集団をつくる雌で、交尾後に越冬します。
毒針を持つのは雌です。雄には毒針がありませんが、飛んでいる個体を一般の人が確実に見分けるのは難しいため、触ろうとしないことが大切です。
成虫と幼虫では利用する餌が異なる
成虫は、花の蜜、樹液、果汁などの糖分を活動のエネルギーに利用します。
働きバチが捕まえた昆虫などは、主に幼虫の餌になります。また、成虫は幼虫の分泌液も利用しており、巣の中では餌のやり取りが行われています。
花に来ているハチと、毛虫などを捕まえているハチでは、餌を探す目的が異なります。
巣を守る行動が刺傷事故につながる
スズメバチは、見かけた人をいつでも攻撃するわけではありません。しかし、巣に近づいたり、枝を揺らしたり、剪定や草刈りで振動を与えたりすると、防衛行動として攻撃することがあります。
採餌中でも、捕まえたり手で払ったりすれば刺されるおそれがあります。
スズメバチの一年間の活動
以下の時期は、日本の温帯地域におけるおおよその目安です。種類、地域、標高、その年の気温によって前後します。
冬|新女王バチが巣とは別の場所で越冬する
晩秋から冬になると、多くの種類では旧女王バチ、働きバチ、雄バチが死に、その年の集団は終わります。
交尾を終えた新女王バチは、朽ち木の中や土中など、寒さをしのげる場所で越冬します。
大きな巣の中で、働きバチと一緒に冬を越すわけではありません。
越冬中の女王バチは、外で活発に餌を探し回る状態ではありません。
薪や朽ち木を動かした際に、潜んでいた個体が見つかる場合があります。
ミツバチが働きバチと集団で越冬するのとは、生活の仕方が異なります。
春・おおむね4〜5月頃|女王バチが活動を始める
暖かくなると、越冬した女王バチが活動を再開します。北海道など寒い地域では、活動開始が遅くなります。
女王バチは花蜜や樹液などを利用して栄養を補い、巣を作る場所を探します。
庭木、軒下、物置、樹洞などを一匹で繰り返し調べるように飛ぶ姿が見られることがあります。ただし、大きなハチが一匹いるだけで、必ず女王バチや巣作り中と判断できるわけではありません。
春〜初夏・おおむね4〜6月頃|一匹で巣作りと子育てを行う
巣を作り始めた女王バチは、最初の働きバチが羽化するまで、さまざまな仕事を一匹で行います。
木の繊維などを集めて巣材をつくる。
育房と呼ばれる部屋に卵を産む。
幼虫の餌を集める。
幼虫を育てる。
巣を守る。
この時期の巣は、夏以降に比べて小さい状態です。コガタスズメバチでは、作り始めの巣が、とっくりを逆さにしたような形になることがあります。
小さな巣でも安全とは限りません。 庭や玄関付近で見つけた場合は、触る前に相談しましょう。
初夏〜夏・おおむね6〜7月頃|働きバチが増え始める
最初の働きバチが羽化すると、餌集めや巣の拡張を働きバチが担うようになります。女王バチは主に産卵に専念し、集団が大きくなっていきます。
この頃から、同じ場所へ複数のハチが出入りする様子が目立ち始めます。
キイロスズメバチなどでは、最初の営巣場所が狭くなると、より広い場所へ移る場合もあります。春に見つけなかった場所でも、後から巣ができることがあります。
夏・おおむね7〜8月頃|巣と集団が成長する
働きバチが増え、巣の拡張と餌集めが盛んになります。庭木や生垣の葉が茂る時期でもあり、内部の巣が見えにくくなります。
花蜜や樹液を利用する。
昆虫を捕まえて幼虫へ運ぶ。
巣材を集める。
暑いときには、水の利用や送風などで巣内環境を調節する。
庭で見かける数が増えても、その場所に巣があるとは限りません。ただし、一定の穴や茂みへ往復する個体が続く場合は注意が必要です。
晩夏〜秋・おおむね8〜10月頃|活動が盛んになり、繁殖期を迎える
多くの種類で集団が大きくなり、新女王バチや雄バチが育つ時期です。巣の周囲では、防衛行動による刺傷事故に特に注意が必要になります。
ただし、すべての種類で同じ月に活動が最大になるわけではありません。比較的早く活動を終える種類もあれば、晩秋まで続く種類もあります。
この時期は、次のような作業前に周囲を確認しましょう。
生垣や庭木の剪定。
草刈りや下草の整理。
落果の回収。
山林や藪の近くでの作業。
根元の掘削や切り株の処理。
「秋になったから、もう活動していない」と判断するのは禁物です。
秋〜初冬・おおむね10〜11月以降|新女王バチが巣を離れる
新女王バチと雄バチが巣を離れて交尾し、新女王バチは越冬場所へ向かいます。
その年の巣では、働きバチなどが次第に減り、やがて活動が終わります。ただし、暖かい地域や年によっては、遅い時期まで活動が続く場合があります。
「11月だから空の巣」といった、日付だけの判断は避けてください。
スズメバチの巣は翌年も使われる?
一般に、同じ巣は翌年再利用しない
日本で一般的なスズメバチの多くは、一年ごとに新しい巣を作ります。前年の大きな巣へ新女王バチが戻り、そのまま使い続けるわけではありません。
ただし、木の枝や屋根のある場所など、営巣に適した条件が残っていれば、同じ場所や近くに新しい巣が作られることはあります。
古い巣が残っていても、現在の活動とは分けて考える
古い巣が見えるだけでは、ハチが活動しているかどうかは分かりません。
反対に、目立つ巣がなくても、樹洞、壁の内部、地中などに巣がある場合があります。出入りするハチの様子も手がかりになります。
種類によって営巣場所も異なる
コガタスズメバチ
庭木の枝や生垣、軒下などに営巣します。葉の奥に巣が隠れやすく、庭の剪定で遭遇する可能性があります。
キイロスズメバチ
建物の隙間や樹洞などに巣を作り、巣の成長に伴って開放的な場所へ移ることもあります。集団が大きくなる場合があり、出入り口付近への接近には注意が必要です。
オオスズメバチ
主に地中の空間などを利用します。木の枝に球状の巣が見えないからといって、その周辺に巣がないとは限りません。
草刈りや根元の作業では、地面の同じ場所へ出入りしていないか確認します。
庭の管理は季節に合わせて行う
春は、営巣の兆候を早めに確認する
軒下、物置、生垣、普段使わない庭の隅などを、離れた場所から定期的に観察します。
女王バチらしい個体が同じ場所へ繰り返し出入りしている場合は、巣作りの可能性があります。確認のために茂みへ手を入れたり、穴をのぞき込んだりしないでください。
夏から秋は、作業前の観察を徹底する
剪定や草刈りの前に、まず道具を動かさず、ハチの飛ぶ方向を確認します。
複数の個体が同じ場所へ出入りしている場合は、作業を中止します。巣がある枝を切る、穴をふさぐ、棒で探るといった行為は避けましょう。
冬も、朽ち木や古い巣を素手で扱わない
冬は活動が少なくなりますが、越冬中の新女王バチや、地域によっては活動を続ける個体がいる可能性があります。
朽ち木や薪の整理では手袋を使い、ハチを見つけても触ったり握ったりしないようにします。高所の古い巣は、転落の危険も考えて処理を依頼しましょう。
よくある誤解
「春のハチは刺さない」は誤り
春は集団の規模が小さいことが多いものの、女王バチにも毒針があります。巣や個体を刺激すれば、刺されるおそれがあります。
「夜なら安全」とは限らない
多くの種類は日中に活発に活動しますが、夜は巣に個体が集まっていることがあります。また、モンスズメバチのように、夜間も活動する種類があります。
夜であることを理由に、自己判断で巣へ近づかないでください。
「寒い日が一日あれば、巣は空になる」とは限らない
一時的に冷え込んで動きが鈍っていても、暖かくなると活動することがあります。外からハチが見えないことだけで、巣が空だとは判断できません。
「女王バチを捕まえれば、地域のハチがいなくなる」とは限らない
周囲から別の女王バチが来ることもあり、捕獲だけで地域全体の営巣を確実に防げるわけではありません。
甘い液を使ったトラップは、設置場所によって人の近くへハチを引き寄せる可能性もあります。玄関や通路などへ安易に置かず、使用する場合は製品の説明に従いましょう。
スズメバチを見つけたときの基本対応
花や樹液に来ている個体を見つけた場合は、手で払わず、刺激せずに距離を取ります。
巣が疑われる場合は、次のように対応しましょう。
剪定や草刈りを中止する。
巣や出入り口へ近づかない。
子どもやペットを近づけない。
自治体の相談窓口や専門の駆除業者へ連絡する。
種類、大きさ、場所を、分かる範囲で伝える。
写真を撮るために近づく必要はありません。高所、地中、樹洞、壁の内部などの巣は、特に自己判断で処理しないようにしてください。
まとめ
スズメバチの一年は、基本的に「新女王バチの越冬」「春の単独での巣作り」「夏の集団の成長」「秋の繁殖」という流れで進みます。
多くの種類では、その年の集団は晩秋から冬に終わり、交尾を終えた新女王バチだけが次の春へ命をつなぎます。ただし、活動時期は種類や地域、気温によって異なります。
庭では春から営巣の兆候を確認し、夏から秋の剪定・草刈りでは特に注意しましょう。巣の有無や安全性を季節だけで判断せず、ハチの出入りが見られる場所では作業を止めることが大切です。