ミツマタを原料にした和紙の作り方|収穫から紙漉きまでの工程を解説

ミツマタを原料にした和紙の作り方|収穫から紙漉きまでの工程を解説

ミツマタは、古くから和紙の原料として利用されてきた落葉低木です。コウゾガンピと並ぶ和紙三大原料のひとつで、繊維が細かく、なめらかで上品な紙に仕上がるのが特徴です。

ミツマタを使った和紙は、やわらかく光沢があり、印刷用紙、書道用紙、工芸紙、証券用紙などにも利用されてきました。植物としてのミツマタは庭木としても親しまれますが、和紙づくりでは主に枝の内側にある「靭皮繊維」を取り出して使います。

この記事では、ミツマタを原料にした和紙の作り方を、収穫、蒸し、皮剥ぎ、白皮づくり、煮熟、ちり取り、叩解、紙漉き、乾燥まで、順を追って解説します。

ミツマタとは?和紙原料になる植物

ミツマタ

ミツマタは、ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木です。枝が三つに分かれるように伸びることから「ミツマタ」と呼ばれます。

春先に黄色い花を咲かせ、庭木や花木としても利用されますが、和紙原料として重要なのは枝の皮です。外側の樹皮ではなく、内側にある繊維質の部分を取り出して紙の原料にします。

和紙の原料には、主に次の植物があります。

  • コウゾ

  • ミツマタ

  • ガンピ

このうちミツマタは、コウゾに比べて繊維が短く細かく、なめらかで緻密な紙になりやすい特徴があります。上品な質感や光沢を出したい和紙に向いています。

ミツマタ和紙の特徴

なめらかで上品な質感

ミツマタの繊維は細かく、紙肌がなめらかに仕上がります。コウゾ紙のような強い繊維感よりも、しっとりとした上品な表情が出やすいのが特徴です。

光沢が出やすい

ミツマタを使った和紙は、表面に自然な光沢が出やすいとされます。印刷や筆記に適した紙としても利用されてきました。

しなやかで扱いやすい

ミツマタ和紙は、柔らかさと適度な強さを持ちます。薄く漉いても均一になりやすく、工芸品や加工用の和紙にも向いています。

高級和紙の原料として使われる

ミツマタは、紙幣や証券用紙など、精密さや品質が求められる紙にも使われてきた原料です。繊維が細かく、均一な紙を作りやすい点が評価されています。

ミツマタ和紙作りの全体工程

ミツマタを原料にした和紙作りは、大きく次の流れで進みます。

  1. ミツマタの枝を収穫する

  2. 枝を蒸す

  3. 皮を剥ぐ

  4. 黒皮を乾燥・保存する

  5. 表皮を取り除き白皮にする

  6. 白皮を水に浸す

  7. アルカリで煮る

  8. 水洗いする

  9. ちり取りをする

  10. 繊維を叩く

  11. 水に分散させる

  12. ネリを加える

  13. 紙を漉く

  14. 圧搾して水を抜く

  15. 板や乾燥機で乾かす

和紙作りは、単に植物を煮て紙にする作業ではありません。繊維を傷めず、不純物を取り除き、均一に水中へ分散させることが品質を左右します。

1. ミツマタの枝を収穫する

ミツマタの収穫は、一般的に冬の落葉期に行います。葉が落ちて休眠している時期は、枝の皮が扱いやすく、繊維原料として加工しやすいからです。

和紙原料としては、若くまっすぐ伸びた枝が使いやすいとされます。太すぎる枝や古い枝は皮が硬く、加工に手間がかかることがあります。

収穫した枝は、扱いやすい長さに切りそろえます。伝統的な産地では、一定の長さにそろえて束ね、次の「蒸し」の工程に進みます。

2. 枝を蒸す

収穫したミツマタの枝は、蒸して皮を剥ぎやすくします。

蒸すことで、木質部と樹皮の間がゆるみ、皮がきれいに剥がれやすくなります。この工程は、和紙原料づくりの初期段階としてとても重要です。

蒸し方は地域や工房によって異なりますが、束ねた枝を蒸し釜や蒸し器に入れ、十分に蒸気を当てます。蒸しが不足すると皮が剥ぎにくくなり、逆に過度に蒸しすぎると繊維の扱いに影響することがあります。

3. 皮を剥ぐ

蒸し上がったミツマタの枝は、温かいうちに皮を剥ぎます。

枝の端から皮をつかみ、木質部から引きはがすように剥ぎ取ります。うまく蒸せていれば、筒状または帯状に皮が剥がれます。

この段階で取れる皮は、外側の黒っぽい表皮を含むため「黒皮」と呼ばれます。黒皮には、外皮、青皮、内側の白い繊維部分が含まれています。

和紙として白く美しい紙を作るには、後の工程で外側の表皮を取り除き、白皮に仕上げていきます。白皮の方が白くきれいな紙になりやすいとされています。 

4. 黒皮を乾燥・保存する

剥いだ黒皮は、束ねて自然乾燥させます。

乾燥させることで、原料として保存しやすくなります。すぐに和紙を作らない場合でも、黒皮や白皮の状態で保管しておけば、必要なときに水で戻して使うことができます。

乾燥は、風通しのよい場所で行います。湿気が多いとカビや腐敗の原因になるため、しっかり乾かすことが大切です。

5. 表皮を取り除き白皮にする

黒皮を水に浸して柔らかくし、外側の黒い表皮や不要な部分を削り取ります。この作業によって、内側の白い繊維部分である「白皮」を取り出します。

表皮をどの程度取り除くかによって、紙の色や質感が変わります。白く上品な紙にしたい場合は、黒い表皮や甘皮を丁寧に取り除きます。

一方で、あえて少し色味や繊維の表情を残すことで、自然な風合いの紙に仕上げることもあります。

この工程は手間がかかりますが、和紙の品質を大きく左右します。ちりや色の濃い部分が残ると、仕上がった紙に黒点や筋として現れます。

6. 白皮を水に浸す

乾燥した白皮は、そのままでは硬く、次の工程に進めません。まず水に浸して十分に柔らかく戻します。

白皮を水に浸すことで、繊維が水を含み、煮熟しやすくなります。水戻しが不十分だと、煮ても不純物が抜けにくく、繊維がほぐれにくくなります。

小原和紙の工程では、白皮を一昼夜以上水に浸して十分に水分を吸収させる方法が紹介されています。 

7. アルカリで煮る

水で戻した白皮は、アルカリ性の液で煮ます。この工程を「煮熟」といいます。

煮熟の目的は、繊維以外の不要な成分を取り除き、紙に使える繊維だけを残すことです。木灰、ソーダ灰、苛性ソーダなどが使われることがありますが、伝統的な和紙作りでは木灰を用いる方法もあります。

煮ることで、リグニンやペクチンなどの不純物が分解・除去され、繊維がほぐれやすくなります。

一般的な手漉き和紙の工程では、白皮をソーダ灰などを入れた湯で数時間煮る方法が見られます。小原和紙では、乾燥重量に対して15%のソーダ灰を使い、約2時間煮熟する工程が紹介されています。 

家庭で実験的に行う場合は、薬品の扱いに十分注意が必要です。アルカリ液は皮膚や目を傷めるおそれがあるため、手袋、保護メガネ、換気を必ず行いましょう。

8. 水洗いする

煮熟した白皮は、流水でよく洗います。

この工程では、アルカリ分と煮出された不純物を取り除きます。洗いが不十分だと、紙の変色や劣化、ぬめり、においの原因になることがあります。

水洗いは、繊維を傷めないように丁寧に行います。強くこすりすぎると繊維が切れたり、絡まりすぎたりするため、流水の中でやさしく洗うのが基本です。

9. ちり取りをする

水洗いした繊維を水の中に広げ、黒い点、傷んだ部分、硬い筋、変色した繊維などを手で取り除きます。この作業を「ちり取り」といいます。

ちり取りは、和紙の見た目と品質を決める大切な工程です。

細かなちりが残ると、完成した紙に黒点や色ムラとして出ます。白く美しい和紙を作るには、根気よく一つひとつ取り除く必要があります。

小原和紙の工程でも、ちり取りは変色した繊維の傷や筋、節などを取り除く作業として説明されています。 

10. 繊維を叩く

ちり取りを終えたミツマタの繊維は、叩いてほぐします。この工程を「叩解」といいます。

叩解によって、繊維が細かく分かれ、水の中で均一に広がりやすくなります。叩きが足りないと、紙肌が粗くなったり、繊維のかたまりが残ったりします。

昔は木槌や棒で手作業で叩いていましたが、現在はビーターなどの機械を使う場合もあります。

ミツマタはコウゾより繊維が短く細かいため、叩きすぎると繊維が傷み、紙の強度や風合いに影響することがあります。適度にほぐすことが大切です。

11. 繊維を水に分散させる

叩いた繊維を水槽に入れ、水の中でよく分散させます。

この水槽を「漉き舟」と呼ぶことがあります。水の中で繊維が均一に広がることで、紙を漉いたときに厚みのムラが出にくくなります。

繊維がかたまりになっていると、紙に厚い部分や薄い部分ができてしまいます。そのため、紙を漉く前に、繊維をよくかき混ぜて均一な状態にします。

12. ネリを加える

和紙作りでは、繊維を均一に浮遊させるために「ネリ」と呼ばれる粘りのある植物性の液を加えます。

代表的なネリの原料には、トロロアオイなどがあります。ネリを加えることで、水中の繊維がゆっくり動き、薄く均一な紙を漉きやすくなります。

ネリが少なすぎると繊維が沈みやすく、紙にムラが出やすくなります。多すぎると水切れが悪くなり、作業しにくくなることがあります。

13. 紙を漉く

いよいよ紙漉きの工程です。

簀桁を使って、繊維が入った水をすくい上げます。簀桁を前後左右に揺らしながら、繊維を均一に絡ませて紙の層を作ります。

手漉き和紙では、薄い層を何度か重ねることで、均一で丈夫な紙に仕上げます。紙の厚さは、水をすくう回数、繊維の濃さ、揺らし方によって調整します。

ミツマタ和紙は繊維が細かいため、なめらかで緻密な紙肌に仕上がりやすい一方、均一に漉くには丁寧な操作が求められます。

14. 紙床に重ねる

漉いた紙は、簀から外して一枚ずつ重ねていきます。この重ねた状態を「紙床」と呼びます。

紙と紙がくっついてしまいそうに思えますが、ネリの働きや水分の状態によって、後で一枚ずつはがせるようになります。

この工程では、紙の端が折れたり、しわが入ったりしないように注意します。紙床をきれいに積むことが、仕上がりの美しさにつながります。

15. 圧搾して水を抜く

紙床に重ねた紙は、圧力をかけて水分を抜きます。

急に強い圧力をかけると紙が傷んだり、ずれたりするため、徐々に水を抜いていきます。水分が適度に抜けると、紙を一枚ずつはがしやすくなります。

圧搾は、乾燥前の重要な工程です。水分が多すぎると、乾燥時にしわや破れが出やすくなります。

16. 板や乾燥機で乾かす

水分を抜いた紙は、一枚ずつはがして板や乾燥面に貼り、乾かします。

伝統的には、木の板に刷毛で貼り付け、天日や室内で乾燥させます。現在では、鉄板乾燥や乾燥機を使う場合もあります。

板干しでは、板の木目が紙にうっすら移ることがあり、自然な風合いが出ます。乾燥方法によって、紙の表情や手触りは変わります。

完全に乾いたら、板からはがして完成です。

家庭でミツマタ和紙を作るときの注意点

ミツマタを使った和紙作りは、家庭でも小規模な体験として行うことは可能です。ただし、本格的に作るには多くの手間と道具が必要です。

特に注意したいのは、次の点です。

  • アルカリ薬品の扱いに注意する

  • 煮熟時は換気をよくする

  • 手袋と保護メガネを使う

  • 排水は地域のルールに従う

  • 食品用の鍋とは分ける

  • 皮を剥ぐ刃物の扱いに注意する

  • カビを防ぐため原料はよく乾燥させる

自由研究や体験用であれば、市販の和紙原料や紙漉きキットを使うと安全で取り組みやすくなります。

ミツマタ和紙とコウゾ和紙の違い

ミツマタ和紙とコウゾ和紙は、どちらも植物の靭皮繊維を使いますが、仕上がりには違いがあります。

コウゾは繊維が太く長く、強靭な紙になりやすい原料です。障子紙、表具用紙、美術紙など、丈夫さが求められる用途に向いています。高知県の土佐和紙に関する資料でも、コウゾは繊維が太く長く強靭で、幅広い用途に使われる原料として説明されています。 

一方、ミツマタは繊維が細かく、なめらかで光沢のある紙に仕上がりやすいのが特徴です。強さではコウゾに劣る場合がありますが、紙肌の美しさや均一さに優れます。

つまり、丈夫で力強い紙を作りたいならコウゾ、なめらかで上品な紙を作りたいならミツマタが向いています。

ミツマタを育てて和紙原料にすることはできる?

ミツマタは庭木として育てることもできます。半日陰から日なたで育ち、春に香りのある黄色い花を咲かせます。

ただし、和紙原料として使うには、ある程度まとまった枝の量が必要です。庭木を数本育てている程度では、本格的な紙作りに必要な原料を集めるのは難しい場合があります。

また、和紙原料にするには、収穫後の蒸し、皮剥ぎ、乾燥、表皮取り、煮熟など、多くの手作業が必要です。単に枝を切って煮れば紙になるわけではありません。

家庭で楽しむなら、庭で育てたミツマタの一部を使い、少量の手漉き紙を作る体験として取り入れるのが現実的です。

まとめ|ミツマタ和紙は植物の繊維を丁寧に取り出して作る伝統的な紙

ミツマタを原料にした和紙は、枝の皮に含まれる靭皮繊維を取り出して作ります。収穫した枝を蒸して皮を剥ぎ、黒皮から白皮を作り、煮熟、ちり取り、叩解、紙漉き、乾燥という多くの工程を経て、ようやく一枚の紙になります。

ミツマタ和紙の魅力は、なめらかで上品な紙肌と、自然な光沢です。コウゾ紙のような力強さとは異なり、繊細で緻密な仕上がりが特徴です。

和紙作りは、植物を育てる知識と、繊維を扱う職人の技術が結びついた伝統文化です。ミツマタという植物を知ることで、和紙が単なる紙ではなく、植物の命と人の手仕事から生まれる素材であることがよくわかります。

botanny

「BOTANICA」の編集者です。本記事はAIを活用した記事です。内容に誤りがある場合には、コメント欄、あるいはお問合せよりお知らせください。

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